第28章 女子会
部屋を出て、足早に駐車場へ向かった。特に急ぐ必要もないんだけど。
「マティーニ!出かけるのかい?」
『キャンティ!あ、コルンも!会うの久々じゃない?』
コルンは無言で頷いた。相変わらず表情は変わらない。組織の中で、コルンの感情を的確に読み取れるのってキャンティだけだと思う。
近くにカルバドスの姿はない。別件で出てるのかな?
キャンティに苦しいくらいに抱きしめられる。
『ちょ……苦しい……』
「何言ってんだい!こんなもんじゃ足りないよ!」
年月が経つにつれて、キャンティの愛が重くなってる気がする。悪い事じゃないんだけど……
「あ、なんで避けた?」
毎回キスしようとしてくる。頬とか額ならまだしも、口にしようとするから避けてるしまうのだけど。
『ほっぺならいいよ』
「なんだい、つれないねぇ……」
そう言いながらも嬉しそう。ほっぺに何度もキスされる。
「あ!!」
『びっくりした……どうしたの?』
急に大きな声を上げるキャンティ。顔もなんだか険しい……。
「マティーニ……深刻な問題なんだけど……」
なんだろう……とドキドキしながらキャンティの言葉を待った。
「カルバドスの野郎……ベルモットに惚れやがった!」
『……は?』
深刻……?いや、キャンティにとっては深刻な問題なのかもしれないけど!
『うーん……別にいいんじゃないかな……?』
「いいわけないだろ!よりによってなんであのお高くとまってる女なんだよ!!アンタやキールだったら許せたのにさ!!」
『ええ……』
どうしてそこまでベルモットの事を嫌うんだろう……ってくらい。ベルモットは相手にしてないけど、またそれが火に油を注いでるようなもので。
「暇さえあれば部屋であの女のドラマ見てるし……マティーニ、どうすればいい?」
『……カルバドスが本気なら応援してあげるべきじゃないかな』
応援したところでベルモットの気が向くとも思えないんだけど……今、この状況で私が言えることはこのくらいだし……。
「キャンティ……時間……」
「え?あ、まずい……」
『任務?』
「ああ、夜だけど。早めに狙撃ポイント決めないとね」
『そっか、気をつけてね。カルバドスのことも……』
「わかってる。様子見ることにするよ……またね、マティーニ」
何度目かのキスを頬にされて、2人は去っていった。