第2章 新たな組織と曲者たち
『わかりました……お手柔らかにお願いします』
「フッ……いいねえ」
「はあ、アイリッシュ、怪我させないでね」
ベルモットは呆れた顔だ。キュラソーも少し不安そうな顔をしている。
『ごめんね、ちょっと待ってて』
2人に謝ってアイリッシュの前に立つ。
「……好きな時に来い」
そう言われてもな……アイリッシュは構えている訳じゃないのに、攻め込めない。隙がなさすぎる。
「……どうしたの?」
ベルモットが動こうとしない私を見て言った。
「攻めあぐねてるようね……無闇に飛び込まないだけの相手をはかる力量はあるってことかしら」
「なるほど……ラムが興味持つわけだ」
くつくつとアイリッシュは笑う。ずいぶん余裕そうだ。
「仕方ねえ……こっちから行くぜ」
と、踏み込んで来る。振り下ろされる右腕を避け反撃に出ようとする……が、続けざまに右脚の蹴りが来て引かざるを得なくなる。
「へえ、よく避けたな」
『避けることしかできないけど……』
アイリッシュは強い。数手躱しただけなのに圧倒的な差を感じる。拳の重さも、蹴りの速さも今まで会ってきた人の中で桁違いだ。
「避けられりゃ十分見込みはある。その歳で攻撃を見切れるなんて大したもんだぜ?」
「そうね、あとは体格の問題かしら……」
とキュラソーが言う。
「貴女とアイリッシュじゃ体格が違いすぎる。避けるだけで手一杯なのも無理はないわ」
「そうだな……これからもっとでかくなりゃいいけどな」
頭の上にポンッと手を置かれた。
「これからが楽しみだ……時間できたら相手してやるよ」
じゃあなと、アイリッシュは部屋を出ていった。
「彼があんなこと言うなんて……」
ベルモットは少し驚いたように言う。
「アイリッシュは滅多に顔出さないから」
『そうなんだ……』
「それだけ貴女に興味があるんだわ」
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「それじゃあ、私はここで。これからよろしくね亜夜」
そう言ってキュラソーは去っていった。
「じゃあ、私も行くわね。任務までにはスマホ用意できると思うから」
『わかった。ありがとう』
部屋に戻ってメンバーのことを考えた。クセはありそうだけど、学べることも多そう。ふと、ラムの言葉が頭をよぎった。
―期待している。