第1章 組織との出会い
「流石だ。君は本当に素晴らしい。これからも期待しているよ、"ファースト"」
『はい』
この組織に買われて何年経つか。裏社会では割と大きな組織らしい。
私は所謂、ボディーガード……いや、使い勝手のいい駒でしかないのだと思う。
ボスが危険に晒されれば、身を呈して守り、相手が拳銃を抜けば、それに応じる。
幼少の頃からそういった教育を受けてきた。銃の扱い方、体術などが主だが、最近はハッキングまで教わるようになった。
以前はもっとたくさん、同じ境遇の子がいた。でも、訓練中や現地で不幸にも命を落とし、今となっては私だけしか残っていない。……たまたま運がよかっただけだと思うのだが、上の者には優秀であるという見方をされる。
今日も取引に同行したのだが、相手はこちらを消そうとしていたようだった。それに気づいて、マニュアル通りの働きをした結果が最初の言葉になる。
「今日は疲れただろう。ゆっくり休みなさい。食事は後で持っていかせる」
『はい』
部屋に戻りながらこれからのことを思い描く。
……何かを求める訳では無いが、退屈で仕方ない。取引相手も毎回同じようなやつらばかりだし、実際に手を出すことの方が少ない。
『明日、何しようか』
自室のドアを開けながら考える。明日は特に用がない。取引もなかったはず。射撃の練習はもう飽きた。ライフルは手に入るまで使えない。体術はまともにやり合える相手がいない。
愛銃のベレッタをそっと撫でた。
『……つまらない』
そんなに呟きが部屋に消えた。