第24章 手解き※
『……は?冗談よね?笑えないんだけど』
「俺だってそう思ったんだがな」
『一応聞くけど断ることは……?』
「無理に決まってんだろ、ラムからの命令だぞ」
『……あの顔で経験ないとか絶対嘘でしょ』
休暇明け初の任務は予想外のもので。まさかバーボンにハニトラの手解きをしろだなんて……普段ならベルモットがやるようなことだけど、今はいないし他に任せられるような人もいないから、と私に白羽の矢が立った。
『ずっと気になってたんだけど、ジンはそういう任務やったことないの?』
「……なくはねえが、すぐ飛んじまうからな」
『ああ……手加減って言葉知らないものね』
「うるせえよ。明日の夕方、あいつが迎えに来るから準備しとけ」
そう言うとベッドに押し倒される。
『あの……言動が伴ってないですけど……?』
「まだ時間あんだろ?付き合え。それに……」
首を撫で下ろす指がある一点で止まる。数日前に付けられたキスマークの上で。
「もっと濃いヤツつけねえとな」
『……好きにしてよ。別にそんなのなくたって離れたりしないけど。ていうか、嫌じゃないの?任務だけどバーボンとするんだよ?』
「任務ならなにも言わねえよ……命令には従うだけだ」
そう言って口を塞がれた。そのままあれよあれよと抵抗する間もなく事が進められていった。
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「お待たせしましたか?」
『……大丈夫よ。さっさと行きましょ』
だるい。おまけに体中につけられたキスマーク。隠すにしてもキリがないし面倒だから諦めた。
先日の事があってから、なんとなくバーボンとは顔を合わせづらい。深い意味はないんだろうけど……自分もなんであんなにドキドキしたのか分からないし。窓の外を流れる景色を見ながら、どうにか気持ちを落ち着かせた。
「まさか着飾ってきてくれるなんて思わなかったです」
『……実際のことを想定しないと意味ないでしょ。これはあくまで任務よ』
そんな会話をして着いたのは立派なホテル。よく任務で使う所だ。
「部屋も取ってあるので……」
腕を組むように促される。大きく息を吐いて自分の中のスイッチを切り替えた。
腕を組み、更に体を寄せる。バーボンの体に少し力が入ったように感じた。緊張……してるのだろうか。
『ねえ、大丈夫?』
「……今のところは」