第23章 デート……?
部屋に戻ると見るからに機嫌の悪いジンと、それをなだめているウォッカ。灰皿にはタバコの山。また1本火がつけられたところ。
『ただいま……何かあったの?』
「マティーニ、実は……」
「ウォッカ、てめぇは出てけ。俺が説明する」
「はっ、はい。それでは失礼しやす」
すれ違いざま、ウォッカに向けられた視線には同情の色が……それになんとなく怖くなってウォッカを引き止めようとした。
それはかなわず、背後から感じる殺気に足が竦む。
『えっと……説明って?』
「……」
恐る恐る振り返ると、短くなったタバコを灰皿に押し付けている。
『ジン?』
「休暇明け、やってもらうことがある」
『任務ってこと?なんの?』
「……その日が来たら伝える」
『え、やだよ。事前に知っておきたいんだけど』
かなり重要な任務なのだろうか……ジンの機嫌が悪い理由はそれ?
『ねえ、教え……うわっ』
ぐっと引き寄せられ、鼻先が触れる距離。
「……デートは楽しかったかよ?」
『デートじゃないってば。服買っただけ』
「本当にそれだけか?」
ご飯食べたり、海行ったりしたことはいいかもしれないけど、キスされたなんて……そんなこと言えない。
「……バーボンに何かされたか」
『なにも』
「なら……」
ジンの親指がすっと唇をなぞる。
「口紅がこんなによれてるのはなんでだろうな?」
『……嘘』
食事の後に一度塗り直したし、その他によれる理由なんて……あのキスだけじゃないか。
『あ、あれは向こうが勝手に……』
「……キス、したんだな?」
その言い方に違和感を覚える。どうにかジンを押しのけ鏡の前に走る。口紅は色こそ若干落ちているものの、よれてなんかいない。
『……カマかけたわね』
「こうでもしねえと言わねえだろ」
背後から手が回され、顎を持ち上げられる。無理矢理後ろを向かされて口を塞がれる。舌が入り込む荒々しいキス。苦しくなってくるけど、この体勢では抵抗できない。
カクンと腰が抜けた。手が回されてるおかげで倒れることはなかったけど、息があがって力が入らない。
「……刻みつけてやらねえとな」
『え、待って、今日は無理……!』
「知らねえよ」
そのままバスルームに押し込まれて、それだけで終わるわけもなく、日付が変わってからやっと眠りにつけた。