第20章 今だけ
カチャカチャと部屋に音が響く。急に時間ができたので、愛銃の手入れをしていた。
スコッチか死んでからしばらく経つ。あれからライとバーボンが組むことはなくなって、その代わり私がどちらかと組むことが増えた。どちらと一緒にいてもスコッチの話題が出ることは一度もなかったし、お互いのことについても触れようとはしなかった。
でも、忘れることはないんだと思う。
そんな時、ジンから伝えられた任務のこと。詳しくは聞けてないけど、でも、結構大掛かりな任務らしい。私は参加しないけど。
『ねえ、誰が来るの?』
「俺とライと……もう1人」
『へえ……ジンがライと組むの初めてだよね?』
もう1人が誰か気になったけど、いずれわかるか……。
「そうだな……くれぐれも他言するんじゃねえぞ」
『……わかった』
この件について知っているのは明日集まる3人と私だけってことか……他言するなってことはよっぽどのことなんだろう。
……どうしてこんな胸騒ぎがするんだろう。
明日は明美に会う予定なのに。2ヶ月以上会ってないからこれ以上期間をあけるのは……。
今日はホテルに泊まるらしく、ジンは部屋を出ていった。
翌日、目が覚めるとメールが一件。
《ごめん、今日は会えなくなっちゃった……。また、都合のいい日決まったら連絡するね。埋め合わせは絶対するから!》
明美からのメールに肩を落とした。急な用でも入ったんだろう……仕方ないけどショック。
かと思えば電話がかかってくる……なんかいい予感。
『もしもし』
「よぉ、元気か?」
『アイリッシュ!久しぶりだね!』
「ああ。近いうちにそっちに顔出すんだが時間あるか?つっても2、3日だけど」
『大丈夫だと思うよ……そんな大きな任務ないし』
「そうか。それじゃ着いたら連絡する」
『わかった。またね』
切れた電話ににやける。今度は何教えてくれるかな……。アイリッシュって見かけによらず面倒見がいい。
『手入れ……しよう』
にやける顔を押さえて呟き、愛銃の手入れを始める。どこに行く時も持っているけど、最近はどうも出番が少ない。
熱中してついでに……と他の銃まで手入れしていたら結構な時間。外も暗くなってきた。ジン達は任務に向かう頃だろうか……。
片付けようと腰を上げると同時に鳴り響く着信音。その音に今度はとても嫌な予感がした。