第19章 アンバランス
歩きながらため息がこぼれる。なんともアンバランスな関係だ。一番重要なところを支えていたスコッチがいなくなって、しかし、ライとバーボンは両端にいるからグラグラと不安定。私にはどうにか倒れないように支えることしかできない。
ただでさえあまり仲良くなかったのに、昨日の一件で亀裂が大きくなりすぎたんだろう。それを直すことなんてできないよね……。
『……信じていいんだよね』
2人から返ってきたのは肯定の言葉。それで心のモヤが晴れればいいのに、どうもうまくいかない。もし、NOCだったとして、私は彼らを殺すことができるだろうか……。
悶々と考えていると聞こえたクラクションの音。その音に振り返るとジンの車が目に入って足早に駆け寄った。
「さっさと乗れ」
『……うん』
助手席のドアを開けて乗り込んだ。すぐさま動き出す車。
『……珍しいね。ジンが運転してるの』
てっきりウォッカが運転してるのかと思ったけど、車内にいたのはジン一人。なかなか見ることのない運転してる姿……うん、かっこいい。
なんとなく緊張してジャケットの裾を掴んだ。
「気に入らねえ……」
『え?』
「それ、誰のだ」
『……ライに借りたの。ドレスちょっと濡れちゃったから』
「……水遊びでもしたか」
『違うよ……かけられたの……うわっ』
急に止められた車。その勢いに体が揺れる。
「ずいぶん馬鹿なヤツがいたもんだな……誰だ」
ギロっと睨まれる。答えるべきだろうか……。
『……私も悪かったし気にしてないから』
「そういう問題じゃねえ」
目を逸らそうとしたけど、顎を掴まれる。
「言え」
『う……この間薬盛ってきた男の娘……なのかな。パパって呼んでて……でも、私のこと知らなかったみたいだし……今回はいいかなって……あんまり大事にしたくなかったし』
「……やっぱり消しとくべきだったか」
『大丈夫だよ、水だったし……それにあの組織の薬結構使えるし……』
「ったく、てめぇは甘いんだよ」
そのままキスされる。
甘い……か。確かにそうかも。きっと今日のことだけじゃない。
口が離れ、車が動き出した。
「……もう少し気をつけろ」
『うん、ごめん』
いつかこの甘さが自分を苦しめることになるとも知らず。
部屋につくなりお仕置と称して抱かれたのは言うまでもない……よね。