第18章 何も聞かないで※
翌朝。電話の音で目が覚めた。
『……もしもし』
「Hi、マティーニ。起こしたかしら?」
『ううん、大丈夫。どうしたの?』
「急で悪いんだけど、今夜任務に出て欲しいのよ」
『構わないけど……誰と?』
「ライとバーボンよ」
昨日の今日であの2人と会わないといけないのか……。しかも、仲の悪い2人だし、今まではスコッチがいたからバランスが取れていたようなものだから不安しかない。
『……わかった。詳細はメールで送っておいて』
「助かるわ……それじゃよろしく」
切れた電話にため息をつく。何もないといいんだけど……。
横に寝ているジン。普段の姿からは想像できないような無防備な顔。私といるからなのか、そういうところを見せてくれるのが嬉しい。
銀の髪をよけて頬にキスをした。すると、その手を掴まれる。
『っ……起きてたの?』
「まさか寝込みを襲うとはな……」
『そ、そういうのじゃないから!』
恥ずかしくなってバスルームに駆け込んだ。きっと軽く拭いてくれただろうけど、シャワー……。
『んなっ……』
鏡にうつった自分の姿に愕然とした。首の付け根の噛み跡と、身体中に付けられたキスマーク。
『ジン!これどういうこと?!』
バスルームから飛び出してジンに詰め寄る。ジンはニヤッと笑った。
「んだよ、誘ってんのか?」
『っ……違う!馬鹿っ!』
くつくつと笑う声を背に再度バスルームへ……。
『……初めてだよね』
頭からシャワーを浴びながら考える。キスマークなんて付けられたことなかったし、あんな強く噛まれたのも初めて。
キスマークなんて独占欲の現れみたいで、ジンにその気があるのかわからないけど、なんとなく浮かれてしまう。
とは言ったものの。よりによって今日の任務は潜入で、パーティドレスを着るのだけど、どうしても首元のものだけ隠せない。
『……どうしよ』
「いいじゃねえか、そのままで」
『よくないわよ』
「不満か?」
『そうじゃないけど……』
「こうでもしねえと逃げちまいそうだからな」
ニヤッと笑うジンから目を逸らした。逃げるわけないのに。
悩んでもしかたないので、ベルモットに連絡した。
呆れたようにため息をつきながらも、ベルモットのおかげで、間近で見なければわからないくらいになった。ついでにメイクもしてもらい、任務へ向かった。