第1章 組織との出会い
私はボスに向けて拳銃を構えた。すると、ボスの顔は引きつった。
「わ、わ、私を殺すのかっ!」
『ええ、そう決めました……事実を知れてよかった。あなたのような者のために尽くしてきた自分が愚かで仕方ありません』
「だ、黙れええええ!」
ボスは隠し持っていたであろう拳銃を取り出した。しかし、震えているから標準が定まっていない。
「お前らのような恩も感じない、そんなクズに殺されてたまるかあああっ!」
『……ここまで育てていただいたことには、感謝しています』
「は……?」
ボスはポカンとした顔を浮かべている。なんとも間抜けな顔。
『だから……本当なら散々痛めつけたいところですが、あなたの言う"恩"が
ありますので、せめて苦しませずに……』
バンッ
「ひぎゃああああああっ」
銀髪の男が、ボスの拳銃を右手ごと撃ち抜いた。
「……くだらねえ思い出話に付き合う程暇じゃねえんだ。耳障りな声出してんじゃねえ」
「はあ、はあ、貴様よくもっ……!」
「まだ動くのか……さっさと死ね」
「い、嫌だっ!誰かっ!」
バンッ
ボスの眉間を弾が貫いた。
『な……なんで』
銀髪の男を睨みつける。
『どうして……私が殺すはずだったのに……!』
「言ったろ、思い出話に付き合う程暇じゃねえんだ。おい、ウォッカ、これで終いか?」
「ええ、おそらくそうだと……」
「ならさっさとずらかるぞ……おい、ベルモット、その女連れてこい」
「ええ、さあ行くわよ……」
手を掴まれたけど、足が動かない。
『なんで、なんで、貴方が殺すのよ!』
銀髪の男の後ろ姿に拳銃を向ける。男は怠そうに振り返る。
『あいつが、セカンドを殺した!私が仇をっ……!』
「フッ、餓鬼が喚くな。そんなザマじゃ、これから先使えるかもわからねえな……」
男が歩いていく。
「この世界で生きていくなら、死は常に近くにあるもの。ひとりひとり嘆いていたら割に合わないわ……それが怖いなら、大切な人なんてつくったら駄目よ」
女性はそう言って、手を引いた。足は抗うことなくついて行った。
建物の入口につけられていた車へ乗せられた。隣には女性が座る。
「じゃあ、出しますよ」
車が動き出す。
空虚……今の自分はその言葉がよく似合う。思考が働かない。何もかもを失った、そんな感じ。
車内はずっと静かだった。