第13章 帰宅と再開と……
「もう無理しないでよ」
『うん。気をつける』
「亜夜姉がいなくなったら悲しいから……」
『悲しい?』
「当たり前でしょ!もう姉妹みたいなものなんだから!」
その言葉に思考が止まる。
『……私なんかが姉妹でいいの?』
「私なんかって……亜夜じゃなきゃダメよ」
「亜夜姉ってどうしてそんなに自己肯定感ないの?」
『だって……』
この組織に来てからも以前の感覚が抜けきらない。自分はただの駒で、能力が低ければ必要がなくて。物心ついた時からそんな扱いをされてきた。だから……この組織の人達は私を1人の人間として見てくれてるとわかっても、それでも……
「ちょっ……なんで泣くの?」
『え……?』
頬に触れて涙が出ていることに気づく。拭っても止まらない。
『なんでだろ……嬉しいのに……』
「嬉し泣きってこと?」
「もっと自分に自信持って。亜夜姉がいるから私たちもこうしていられるのよ」
『うん……ありがとう』
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「落ち着いた?」
『……ごめん。変なとこ見せちゃって』
「それだけ気を許してくれてるんでしょ?嬉しいよ」
淹れなおしてもらった紅茶に口をつける。フワッといい香りが鼻を抜ける。
「何かあったら話してよ。いつも聞いてもらってるばっかりなんだから」
『わかった……』
「そうは言ってもこんな時間ね。名残惜しいけど……」
「ホントだ。帰らなきゃ」
『そうだね……今日はありがとう。会えてよかった』
「こちらこそ。また連絡するわ」
「亜夜も志保も気をつけてよ。何かあったらすぐ……」
『大丈夫よ。明美も彼にちゃんと守ってもらって』
志保のラボを後にする。明美ともその場で別れた。
『姉妹か……』
くすぐったさを感じる言葉。大事な人はつくらないって決めたのに、あの2人は何があっても守りたいと思う。
2人だけじゃない。この組織のメンバーは本当に大事な人達。傷ついて欲しくないし、万が一のことがあれば命を捨ててでも助けたい。
ここに来たあの日、私の全てが変わった。彼らには本当に救われたから……。
『そういえば……明美なんかあったのかな……』
別れ際の表情が少し悲しげだったような……。
この時、もう少し気にかけていればよかったのに。