第2章 暖かさに包まれて 一期一振
一期一振。
粟田口吉光の手による唯一の太刀。
数多くいる短刀たちの兄でもある。
多くの者から信頼される強さ。
いつも弟たちのことを気にかけている優しさ。
惹かれないはずがなかった。
しかし、彼はあまりに大人で相手にされるわけがない。
そう思っていた。
実際、粟田口の短刀たちのように「いち兄」と呼んでしまったことが何度かあった。
それに対して一期は「主からそのように呼んでいただくのも、妹が出来た気分でなかなかよいものですな。」と笑ってくれた。
そんなこともあったので、せいぜい妹程度の存在だろうと思っていた。
そういう事情もあって今まで彼に対する思慕の念は心の奥底に仕舞い込んできた。
それが今、彼の方から私を想っていることを告げられた。
正直混乱していたがとても嬉しかった。
「一期、私…」
返事をしなければ、と彼の名を呼ぶと私の口に人差し指が当てられた。
「主、そろそろ出陣の仕度をしてまいります。
お返事は、帰還後に。」
最後にすうっと私の頬を撫でると抱き締めていた手を離し、一礼して部屋を出ていったが、彼が出ていった後もしばらく心臓は早いままだった。
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一方、一期と主がいなくなった粟田口部屋では
薬研「全く、いち兄も見せつけるよなあ。」
乱「そうだよね〜ボクたちが気づかないはずないのに」
薬研「あれで付き合ってないんだから、不思議なもんだな」
乱「うーん、でもそろそろな気もするなあ。」
薬研「なんでそう思うんだ?」
乱「オトメの勘、かな?」
薬研(いやお前も男だろ)