第3章 病室にて 鶯丸
「ねえ…」
「だから、これからはある程度君を縛り付けた方がいいかと思ってな。」
腕を押さえられ、頭に手を置かれ、これではまるで組敷かれているようだ。
恥ずかしい。
彼は私の心に気付いていないはずだから余計に恥ずかしい。
そんな私をよそに、文字通り好き勝手私で手遊びしている彼。
私を見つめる黄緑の瞳は先程の穏やかさから一転して、切迫した悲しみと寂しさを湛えていた。
色々と物申したいことはあったはずなのにいざその目を見ると怒る気も失せてしまった。
「…私が鶯丸や皆を置いてどこかに行って戻ってこないと思った?
私が見舞いは不要だって伝えたのは、…こんな可愛くない姿を見せたくなかったからだよ。」
ここまで来れば隠しても仕方ないと思い正直に白状することにした。
平凡な審神者であるとはいえ数々の名剣を管理しているのだ。
光忠ほどではないが、刀剣男士の前ではそれなりの格好をしていたいし、一番好きな男の前となれば尚更だ。
言いたいことを言い切って一人すっきりしていると頭上からため息が聞こえた。
「はあ…君は俺より大雑把な人間だと思っていたが、そうでもないみたいだな。」
「細かいことは気にするなって言ってるひとには言われたくないんですけど…」
平静を装いながらいつものように切り返すものの、かつてないほど近い距離感で心臓がどうにかなりそうだ。
元々線の細い身体である上に、いつも大包平といるせいであまり感じることはなかったが、こうして覆いかぶさるような体勢になるとすっぽりと私を覆ってしまえる。
もう少しで触れ合いそうな距離で鶯丸が低く囁いた。
「君は、君が思っている以上にいつだって愛おしい存在だ…食べてしまいたくなるくらい。」
それ以上うまく返せず固まっていると、すっと身体が離れ、掴まれていた腕も離された。
「もう行くよ。あまり長居するのも良くないからな。うまい茶菓子を用意して待っている。」
先程の妖艶さはどこへやら、何事も無かったかのように鶯丸は病室を出て行った。
あとには囁かれた内容に混乱する審神者が残るだけだった。
鶯に食べられるまであともう少し。