第1章 恋の訪れ
『おばあちゃん、大変!』
翌朝から賑やかな声が響くと同時に手伝いをしていた手を止める。大変と言う割には嬉しそうな顔をしていた。
「どうしたんだい?」
『今日ね、杏くんがお迎えに来てくれるって言ってたんだった!』
話しにはよく聞くがまだ会ったことのない杏くんという子の代わりに昨日の煉獄槇寿郎の顔が頭に浮かんだ。
『いつくるのかな~』
時間までは決めていなかったのか途端に落ち着かない様子を見せる。
「手伝いはいいから仕度しておいで。」
『いいの?!』
ありがとう!と言いながら慌ただしく動き出したのを横目で見つつ作業を再開した。時々聞こえるバタバタと元気な足音に笑みがこぼれる。
『おばあちゃーん!玄関にいるねー!』
「気をつけて行ってお出で。」
恵は最初こそ大人しく玄関にいたが、待ちきれず少しずつ玄関から門へ、門から外へと昨日の約束は何処へいってしまったのか、、、、少しずつ移動していった。
そこへお日さま色が見えた途端思わず身体が動いた。
『杏くん!』
「恵!!危ないから家にいる約束だろう!」
駆け寄ってくる恵に少し驚きつつ杏寿郎も走り出した。
ふと、孫娘の嬉しそうな顔が頭に浮かび、どんな子なのかと興味が湧いてしまった。そんな事を考えていると外から孫の名前を呼ぶ、それはそれは大きな声が聞こえて何事かと外に出た。
「失礼します!!恵を迎えに参りました煉獄杏寿郎です!!」
左腕一本で軽々と孫を抱えて入ってきた子にあぁこの子だと確信する。父君と瓜二つの顔だけではない以前孫が言っていたお日さまがそこにあった。
「わざわざ来てくれてありがとうね。暗くならないうちに帰ってくるんだよ。」
『「はい!」』
祖母は家の中に戻って行き、同時に行くぞと言う杏寿郎の声に腕から降りて歩こうとするが、降ろしてもらえない。
恵をがっちりと抱えたまま歩きだした杏寿郎に歩きたいと言う恵。
「昨日の怪我も痛むだろう!それに家で待つという約束を守らなかったから今日はこのままだな!」
諦めて抱えられていた恵が、目線が合わず寂しいと言う為、それならと横抱きにした杏寿郎だったが色々と近すぎてしまい、逆に目線を合わせられなくなる2人だった。