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チョコレートコスモス

第1章 恋の訪れ





静かな廊下、聞こえるのは2人分の足音と野鳥の鳴き声。
通された部屋には恵は居ない、それがこれからする話しがどれだけ重要なのかを物語っている。

向かい合って座り少しの沈黙のあと先に口を開いたのは槇寿郎だった。

「何分回りくどいのは性に合わないので単刀直入に話すが、お孫さんの血には特別な力があるとお見受けする。」

「何を馬鹿なことを。」

「俺の怪我が跡形もなく消えていた。怪我の手当ての為、屋敷まで抱えて行ったときだ。俺以外誰も知らん。この血のことは下手に知られてはいかんだろう、今まで大変な苦労をされたのではないか?」

知られてしまった。身体の芯が冷える感覚、早鐘を打つ心臓、この男に嘘は通用しないことなど彼の目を見れば分かる。諦めたように視線を落とし話し始めた。

「如何にも、私の亡き夫、孫娘の母と、代々受け継がれてきた力が恵にもあります。病ではなく外傷であれば血を使い癒すことができるでしょう。」

酷な話しだ。傷を癒すなど聞こえは良いが使い方次第、権力や悪意を持ったものに見つかれば道具として扱われるのが目に見えるようだ。槇寿郎の頭には杏寿郎より一回り以上小さい恵の顔が浮かんでいた。

「あの子の母は怪我をした者を放っておけず何度も危険を冒す子でした。恵には事故死と伝えましたがあの子の母はその血を狙う者によって殺されたのです。だからこそこの力を隠し生きていくしかないのです。」

震える手を握りしめて話し続ける。

「力の代償もあります。もう少し孫が大きくなったら全てを話す覚悟です。身体が弱い私が守れるのもあと数年でしょうから、、」

「でしたら、煉獄家が力添えしましょう。私が留守でも家には愚息が居ります。まだ幼いながらその辺の男共などより腕も立つ。」

それに、、、と槇寿郎は続ける。

「それに、うちの愚息がお孫さんにどうも惚れてしまっているらしくてな、、、」

頬を掻きながら、照れくさそうに言う槇寿郎に、最初に抱いた恐怖、不安は消え失せこの方々ならとゆっくりと頭を下げた。

「ありがとうございます。孫をどうか、、、」

「堅苦しい、2人きりの家族だろう。煉獄家の男は豪胆なんだ、あんたら2人くらい何者からも守ると約束しよう。」






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