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チョコレートコスモス

第1章 恋の訪れ


その後も杏寿郎は送り迎えを欠かすことなく、楽しい日々は過ぎていった。そんな中、恵の気がかりは瑠火のこと。療養しても一月前と変わらない、逆に以前より少しだが調子が悪そうにも感じる。瑠火が体調を崩してから煉獄家には恵の祖母より少し若い、女中が出入りし、家事の心配はなくなったが少しでも皆が笑顔で過ごせるよう恵は積極的に瑠火や女中の八重の手伝いをしていた。今日は八重とお茶の準備をし、旬の桃を切り瑠火の所に持って行く。

『瑠火さま、どーぞ!桃美味しいですよ!』
「ありがとうございます。」

縁側に座る瑠火の隣に盆を置き、すぐ後ろの瑠火の部屋ですやすやと寝ている千寿郎を起こさないように静かに腰を下ろす。恵視線の先には木刀を振るう杏寿郎の姿、休憩にしようと声をかけることも忘れ見つめる。視線に気づいた杏寿郎が振り返り、先ほどの真剣な表情からパッと笑顔に変わる。それだけなのに急に胸が騒がしくなり瑠火に抱きつき顔を隠した。

「杏寿郎、休憩にしましょう。八重さんと恵さんがお茶を淹れてくれましたよ。」
「はい!」

瑠火に返事をし、こちらへ近づいてくる足音に今度は思わず瑠火の背中に隠れる。

「恵どうした?桃食べないのか?」
『たべる、、、』

ゆっくりと顔を上げると視線が絡む、外で食べようと恵の手を引き歩きだす。反対の手には恵の頬と同じに色づいた桃が2つ。
近くの土手に並んで座り桃にかじりつく。少しとろっとした甘くみずみずしいそれに頬がゆるむ。

『あまーい!おいしい!』
「うまい!うまい!」
『杏くん食べるの早い!』
「うまいから何個でも食べれそうだ!!」

食べ終わった杏寿郎の手をつたう汁を舐める仕草にドキッとしてしまい、慌てて視線を反らして桃を食べ進める。あと数口のところで桃の汁が顎から首へゆっくりと流れ落ちる。
着物が汚れないように反射的に身体を動かそうとしたその時、鎖骨から首へ熱いものが、、、

「着物にシミができてしまうところだったな!」

目の前にある顔、恵の桃の方が甘かったんだなと言いながら舌なめずりをする杏寿郎は恐ろしいほど無邪気に笑っている。

『杏くんのばかー!!』
「なぜだ?!」

走っていく幼なじみを追いかけるも口を利いてくれず焦る杏寿郎がいた。


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