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チョコレートコスモス

第1章 恋の訪れ



恵には両親いなかった。正確にはいたが、生まれてすぐに亡くなったそうだ。

今は祖母と2人で広すぎる程の家に住んでいる。

なぜか祖母は私が怪我をするとひどく心配していた。

血が出ると慌てて布を当てて隠していた。

このくらい何ともないと言っても聞き入れてもらえず、遊びたくて仕方ない年頃の子供は祖母の目を盗み外に出ることが増えた。

この日もいつものように祖母の目を盗みお気に入りの場所まで走る。

ここにはヤマグワの実が沢山成っている。

自分の身長では届かないため木に少し登り手を伸ばした。
片手を木から離した瞬間、視界がグラッと揺れた。
木の幹や枝、周りに生えているツルに身体を掠りながら地面に落ちた。

痛くて動けず蹲る、そこへ近づいてくる足音に一気に不安になり恐怖で身体が震えた。

「大丈夫か?」

見慣れた髪色に、聞き慣れた声に安心した。

『槇寿郎さま』

「手当てしよう、屋敷まで運ぶぞ。」

『ありがとうございます。』

軽々と恵を抱えて歩きだす、いつもの着流しではなく黒い詰襟、学生服にも似た服に身を包み炎を連想させる羽織を着ていた。

『お仕事ですか?』

「あぁ、だが終わって帰るところだったから問題ない。」

ホッとした表情になったのも束の間、顔を青くした恵。

『ごめんなさい!恵の血が槇寿郎さまの手と服を、、、』

慌てて槇寿郎の腕から降りようとする恵を静止し、構わない、と歩を進める。

そんなやり取りをしているうちに煉獄家へ着いた。

中には丁度、瑠火の診察に来ている医者がいたため恵の傷の手当ても頼んだ。

槇寿郎は1度湯浴みをすると言い残し、脱衣場へ行き隊服を脱ぐと目を見張る、、、

「どういうことだ、、、」

何度も自分の両腕を見るが、任務で負ったはずの傷が跡形もなく消えていた。

すぐに血は止まっていたとはいえ傷までなくなるのは変だ。恵を抱えて歩きだしたときも少なからず痛みはあった、、、

恵を抱えて、、そこで思いだしたのが腕に恵の血が伝ったことだった。

まさかとは思うが、傷を癒す血を持つ一族の話を夢物語で聞いたことがある。

「まさかな、、、」

慌てて湯浴みを済ませ、書庫に向かった。



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