第25章 溶けていく
「ほっぺたもこんなに腫れとる…痛かったやろ…」
「ううん、大丈夫だよ」
私がそう言うとお茶子ちゃんは少し怒った顔をして
「叶ちゃん、大丈夫じゃないときは大丈夫じゃないって言ってええんよ、A組の人みんな叶ちゃんの味方やもん、みんな叶ちゃんのこと心配して探してたんよ」
そう私に言った。
それを聞いて心の奥の何かが溶けていくようだった
お茶子ちゃんはとても優しい顔で私を見つめた。
大丈夫じゃないって言っていいの…?
その言葉を頭で繰り返すと、体の力が抜けていく
私本当は大丈夫じゃない。
両親が死んだあの時から、全然大丈夫じゃないの
「お茶子ちゃん……私怖かったの、個性も使えなかった…」
言葉にすると感情が抑えられなくなってしまう。
「全然ッ、大丈夫じゃないッ…」
そう言うとお茶子ちゃんは私を強く抱きしめてくれた。
その身体があまりに暖かくて、私は初めて声を上げて泣いた。
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病院に運ばれ手当てと事情聴取を受けた後、心操が右手に大怪我を負ったことを知った。
それを聞いて私が言葉を失っていると、葉隠さんがそっと教えてくれた。
「心操くん、みんなが街中探してる中一人で学校に戻って行ったんだよ」
「そうだったんだ…」
「捜索しに行くときも、一緒に探してくれって色んな人に声かけてた、叶ちゃんのことすごく心配してた」
そう言われ私は助けに来てくれた心操の事を思い出していた。
私をレイプすることを目的に私を誘拐したあいつは、学校の演習場に私を連れ込んでいた。
学校の敷地内は凄く広いし、きっと沢山探し回ったんだ。
そう思うと胸が締め付けられた。
「心操…私のせいで怪我したんだ…」
そんなことを考えながら、私は病院を出た。
病院を出るとそこには迎えの車と共に相澤先生が立っていた。