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嘘つきのヒーロー

第25章 溶けていく


【幻想叶side】

心操とあいつの叫び声が響く中、あいつの叫び声を最後に辺りは突然静かになった。


私は心操があいつに何かされたんじゃないかと思い、必死で耳を澄ませていた。
すると、はだけていた上半身に服をかけられる。



「大丈夫か」

心操の声だ
私は心操の声にほっとして、全身の力が抜けていくのを感じた。


服をかけてから真っ先に私の目隠しを外すと、
心操は私の目を見てとても安心した顔をした。


「ああ…よかった、目は無事だったんだな」


そう言われ、心操の安心とは裏腹に私の心は曇っていく。



心操が助けに来てくれて嬉しいのに、
本当に安心したのに、

それ以上に、自分が何もできなかったことが悔しい。


“目を塞がれれば使えない”

そんなことわかっていたけど、本当に何もできなかった。
私の個性は役に立たない。自分の事も守れない。



そう思うと情けなくて涙が零れていく



「目があったって、何もできない」

私がそう言うと心操は私の顔を見た。


「こんな個性…ヒーローになれないよ」

それを聞いて心操はとても悲しそうな顔をしていた。


しばらく黙ってから心操は私に言う。

「そんなこと言うなよ…、言い訳しちゃいけないって…お前が教えてくれたんだろ」

心操は私の目を真っ直ぐに見て、必死に何かを伝えようとした。



だけど、その言葉を聞いても私の心は完全に閉じていた。


心操と私がその場で黙り込んでいると遠くから声が聞こえた。



「叶ちゃんーー!!」

「幻想どこだー!」



A組のみんなや先生の声がした。
その声に心操が応えると皆がここに向かってきた。



「叶ちゃん!!」

お茶子ちゃんは私の姿を見ると駆け寄って抱きしめてくれた。

「見つかってよかった…不審者に連れていかれたゆうてたから、皆でそこら中探したんよ」

そう言って私にかけられた服を見て怪訝な顔をした。


「なにか…されたん…?」

そう聞かれ私は答えられなかった。
そんな私を見てお茶子ちゃんは私の頬を両手で包んだ。
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