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嘘つきのヒーロー

第24章 ぶつけあい


「お前……叶ちゃんの…」
そう言ってそいつは何か思い出したように黙ってしまった。


俺の個性、知ってるってわけか


そう思ったが、俺はそいつに話しかける。

「お前の目的はなんだよ、幻想を離せ」


こいつが一言でも俺と会話すれば個性を使える。
個性を使って動きを止めれば幻想を助けられる。


俺はそいつの返事を待つが、そいつは笑うだけで俺と会話をしようとしなかった。

その代わり幻想に近づき、幻想に話しかけた。



「やだねえ、叶ちゃん、こいつ俺たちの事邪魔しようとしてるよ」

そう言ってそいつは幻想の目にナイフを当てた。


その様子を見て背筋が凍っていく。


やめてくれ、幻想の個性は目を使うんだ。
目を使えなくなったら幻想はヒーローになれない。


「やめろよ!目的はなんだ!」

俺がそう叫んでもそいつは笑うだけで答えない。


「ねえ叶ちゃん、僕と一緒に来てくれたら目は傷つけないよ…だから分かるよね?こいつに黙って帰るように言ってやってよ」

そう言ってそいつは幻想の首にナイフを当てた。

すると幻想は口を開いた。


「しんそう…私、大丈夫だから、…大丈夫だよ」


取り繕ってそう言う幻想の声は震えていた。


大丈夫なわけないだろ。
何言ってんだよ。



「お前、幻想の事が好きなんだろ」

俺がそう言うとそいつは俺の顔を見た。

そいつは俺を憎らしそうに見つめてから深く頷く。


「…お前俺を生かしておいていいのか?俺は幻想と付き合ってるよ。だから俺を殺さないとお前は一生二番手だ」


できるだけこいつの神経を逆撫でするように、挑発して話しかける。


すると俺の意図を察したように幻想は口を開いた。

「やめてよ、やめてよ心操、そんなことしなくていいよ」

幻想がそう言うとそいつは苛立ちながら

「お前は黙ってろ!!!」

と幻想に叫んだ。


「確かにお前を殺さなきゃ俺は一番になれないよな…だけど変な真似してみろよ、叶ちゃんの目は潰すからな、お前それが嫌なんだろ?」

そう言ってそいつはにやにやと笑った。




「お前、何も喋らずにこっちにこい」

そう言われ俺はそいつにゆっくりと近づいた。
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