第19章 気味の悪い大きな目
「わッ!!心操?!」
幻想を抱き上げて走り出すと幻想は驚いていた。
「悪いッ…口閉じててくれ!!」
そう言うと幻想は状況を理解したのか、振り落とされないように俺にしがみついた。
ああ、幻想が軽くてよかった。
あいつが何者なのか分からない以上、俺たちだけで戦うのは愚策だ。
それに幻想をストーカーしている証拠はない。
今はこいつを守るのが最善だ。
俺は幻想を抱えながら、無我夢中で学校に向かった。
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「はあッ…はあッ……」
全速力で走り切り、学校まで着くと俺は幻想を下ろした。
息切れしながらも来た道を確認するとあいつは追ってきてはいないようだった。
「あいつ……なんなんだ」
疲労から地面に膝をつくと、座り込んでいる幻想が口を開く
「…あの目、何日か前に私の部屋の外にいたやつと一緒だ…」
「部屋に?」
俺がそう聞くと幻想は小さく頷いた。
お前いつもなんにもないよって言うじゃないか。
やっぱり嘘だったんだな。
そう理解すると握った拳に力が入っていく。
あの気味の悪いあいつがお前を苦しめていることに腹が立つ。
だけど、何も教えてくれないお前にも腹が立つ。
「おい、相澤先生のとこ行くぞ」
俺がそう言うと幻想は驚いた顔をした。
「え…まってよ、…この前は黙っててくれるって…」
「いい加減にしろよ!!」
思わずそう怒鳴ると幻想はビクンと身体を震わせた。
俺自身も怒鳴った自分に驚いた。
しかし、爆発してしまった感情は溢れ出すと止まらない。
「お前に何かあってからじゃ遅いんだよ…、俺はもうお前が一人で全部抱え込むのは嫌なんだよ」
そう言うと幻想は何とも言えない顔をした。
「頼むからもう抱え込まないでくれよ、幻想だってこんなことの為に雄英入ったわけじゃないだろ」
なんとか伝わって欲しい、そんな思いで幻想の顔を見ると
幻想はしばらく黙ってから静かに頷いた。