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嘘つきのヒーロー

第19章 気味の悪い大きな目


その顔を見て、俺はふと相澤先生の話を思い出す。




『俺らも幻想も、こういう個性のやつはいざという時、一人で戦うしかない』



幻想は目が使えない状況になったら、幻想はどうするんだろう。
幻想は…最悪の場合一人で死んでいくんだろうか

そんなことを考えてゾッとした。



ああ、でもそれは俺にも言えることだ。
俺も声が使えない状況になったら、そうなるんだろう。



だけど、誰にだって何かしらのハンデはある。
個性が通用しない状況だってあるだろう。


そう考えふと幻想を見る。



そんなに…一人で強くなるのは重要な事なのか。

お前にとって、一人を選ぶのはそんなに重要な事なのか?





俺の中にある相澤先生の言葉への違和感は日を追うごとに大きくなっていった。












「心操」


突然袖を引っ張られ、ハッとする。



話を聞いていないから怒ったのかと思ったが、違った。

幻想は強張った顔で俺たちの後ろを見ていた。


嫌な予感がして、幻想の視線の先を確認する。






そこにはあいつがいた。


隠れることもせずこちらをただじっと見ている。

はじめて見たときよりも明らかに距離が近かった。



「あいつ…本屋の…」

幻想が隣でそう呟いた。


見開かれたその目は俺の隣の幻想を見つめている。



そいつの異様な雰囲気に俺の背筋は凍った。




…どうする?
どうしたらいいんだ?!


あいつ普通じゃない。
姿を隠さず現れたってことは幻想に危害を加えるかもしれない。


走って逃げるか?
…いや、幻想は足を怪我してる。


個性使って制止するか?
…いや、口を開いてくれる保証はない



高速で巡る思考の中、
小さな声がした。




「心操…」

俺に触れている幻想の手は震えていた。




その時全身が急激に熱くなった。



幻想は俺を頼ってるんだ。
いつもは言葉にできないお前が、今俺を頼ってるんだ。


そう理解した瞬間、考えるより先に身体が動いていた。
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