第19章 気味の悪い大きな目
「……分かった、そうだよねもう一人じゃどうにもできない」
「…よかった…じゃあ今から行こう」
そう言うと幻想は俯いた
「…明日…、先生にはちゃんと言うから、明日にしよう」
「なんでだよ」
「この件が公になったら色々制限かかっちゃうと思うから…、今日中に色々済ませておきたいの」
腑に落ちない俺の顔を見て幻想は言う
「お願いだから…」
真っ直ぐに俺を見るその目は曇りが無く本当に綺麗だ。
俺は思わず頷いてしまった。
俺はなんでこう幻想に弱いんだ…
本当は今にでも報告して、あいつを何とかしてもらいたいのに
そんなことを考えていると、地面に座り込んだままの幻想に気付く
「…とりあえず時間だから立ちなよ」
そう言うと幻想は恥ずかしそうに笑った。
「ごめん…結構びっくりしちゃったからさ…しばらく休んだら向かうから先帰ってて」
よく見ると幻想の手は微かに震えていた。
それを見て、思わず…
思わずその手を握ってしまった。
「えっ…」
「あっ…いや、」
自分でも不意識にしてしまったそれはいい訳が見つからない。
お互い何も話さず、沈黙していると幻想が俺の手を握り返した
細く柔らかい手
突然のことに心拍数が早くなる
動揺している俺に幻想は言った。
「心操は…誰にでもこんなことするの」
俺の目を見ずに、そう呟く。
誰にでも…?
手を握ったことか?
俺は…こういうこと誰にでもするのか?
そもそもなんで幻想の手を握ったんだ?
「誰にでも……じゃないと思う」
それを聞いて幻想は握っている俺の手にもう一度力を込めた
「…私も誰にでもじゃない…」
そう言われ鼓動が早くなっていく。
「…心操と一緒にいる土曜日が無くなっちゃうの、ちょっと寂しいんだ。馬鹿だよね」
「それってどういう…」
俺が言い終わる前に幻想は俺の手をパッと放した。
「落ち着いたから戻ろっか!」
その顔は僅かに頬が赤かった。