第19章 気味の悪い大きな目
【心操人使side】
土曜日幻想は足を怪我しているのに、祖母の家に行くと言って聞かなかった。
「なあ、ほんとに大丈夫なの」
「全然だよ、走れないけど歩けるから」
そう言って幻想はその場で軽くジャンプして見せた。
綺麗な黒髪が揺れる。
「…そういうの、気を付けなよ」
俺がそう言うと幻想は目を細めて優しく笑った。
その顔は両親を失ったようには見えない。
俺には意地っ張りで、努力家のただの少女に見えた
いつものように幻想の祖母の家への訪問を終え、
寮に帰るまでの道、幻想は話し始める。
「心操、最近頑張ってるって相澤先生から聞いたよ」
「え、そうかな」
「うん、授業でも前より上手く動けてるし周りとの連携もとれるようになってて……って私なんかが生意気だよねごめん」
そう言って幻想は頬を掻いた。
「いや全然いいよ、むしろ参考になる。幻想の方が個性の使い方上手いし」
そう言うと幻想は驚いていた。
「え、…そんなことないと思うけど」
「幻想は周りの事よく見てるじゃん、自分が指揮するかどうかも臨機応変に判断してるし、体の使い方も体力も前よりも向上してるし…」
日々見ていた幻想の分析を語る。
ふと幻想を見るとなんだか顔が赤かった。
「…?どうした?」
「い、いやそんなに褒めてくれると思わなくて」
「俺ずっと幻想の事すごい奴だと思ってたよ、ノート貰った時から」
「そ、そうなんだ…」
幻想は俺から顔を背けてしまった。
微かに耳が赤い。
「…私も心操のことすごいなって思ってたよ」
「えっ」
ふと呟かれたそれに驚いてしまう。
そんな俺を見て幻想は面白そうに笑った。
「私は一年の頃から心操のことすごいと思ってたよ」
「そう…なんだ」
「そうだよ、心操が人一倍熱心に授業聞いてたり、ストイックに頑張ってるの見ると私も頑張らなきゃなーってなるよ」
「わ、分かったからもうやめて」
あまりにすらすらと言われるそれに恥ずかしくなってしまう。
そんな俺を見て幻想はけらけらと笑っていた。