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嘘つきのヒーロー

第8章 焦り


「部屋、何かあんの?」

「……いや、」

「なに?」

「なんにもないよ」


幻想はそう言うが、固く握られた手は僅かに震えていた。




「相澤先生も、心配してた。…何かあるなら教えてよ」


そう言うと幻想は黙り込んで、考え事をしていた。
俺はそれを見守って幻想が話すのを待った。


しばらくして幻想は申し訳なさそうな顔をして俺を見る。


「……気のせいかもしれないけど、……見られてるの」

「…見られてる?誰に…?」

「分からない…」

「ここ雄英だよ?そんなに簡単に外部の人間は入れないと思うけど」


そう言うと幻想は黙ってしまった。
しかしその顔は確かにその誰かに対して怯えている。




「…じゃあ、俺が部屋見てみるよ」
その姿を見て思わずそう言ってしまった。


それを聞いて幻想の顔は少し緩んだ。


「そしたら少しは安心できるでしょ、…早く行こう」

「…うん」





幻想の部屋に着き、俺はドアを開けた。


ベッドの下を見て、窓の鍵がかかっているか確認する。
最後に念のためベランダに出るが、人影はない。


「なにもないみたいだよ」

そうドアの外で俺を見守る幻想に声をかける。


「そっか、ありがとう」

そうお礼を言う幻想は、安心した顔ではなかった。


「…もし気になるなら先生に相談してみたら?」

「ううん、それはいい」

「なんでだよ、それが一番いいと思うけど」

「…お願い、誰にも言わないで」


そう訴える幻想の顔は真剣だ。


「そう…分かった。言わないよ」


その顔に負け俺がそう言うと、幻想はほっとした顔をしていた。
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