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嘘つきのヒーロー

第7章 蝕み


【幻想叶side】

昨日見た不審者は結局何者なのか分からずに、誰かに報告することもしなかった。




誰にも迷惑をかけたくない。
自分で何とかしたい。

もう弱い人間でいたくない。
弱いままでいると、あの時両親を救えなかった自分と重なるから。


そんな気持ちは私を強く、きつく縛っていた。






「やばい…今日全然だめだ」

昨日は一睡もできずに訓練中にミスを連発してしまった。



「叶ちゃん今日調子悪そうだけど…」

「そうだよ、大丈夫?」

私の不調を見かねて梅雨ちゃんとお茶子ちゃんが話しかけてくる。


「ごめん迷惑かけて…でも全然大丈夫だよ」

私がそう言っても二人は納得していないようだった。



「叶ちゃん何かあったらいつでも相談してね」

「そうよ、一人で溜め込むのは良くないわ」

「…うん、ありがとう」




二人とも優しい、優しくて眩しい。
だから頼りたくない。優しさに甘えたくない。


私みたいな個性のヒーローは、一人で戦えなきゃいざという時何もできない。
だからこんなことで皆に迷惑かけたくない。






睡眠不足で朦朧とする頭で何とか一日を終えると、相澤先生に声をかけられた。


「お前今日どうした」

「え、何ですか」

「とぼけるな、お前目の下にクマできてるぞ」

そう言われ相澤先生は自分の目の下を指さす


「…あ、いや、少し寝不足なだけで」

私がそう言うと相澤先生は私の頭を軽く叩く


「お前は嘘が下手すぎだ」

そう言われ先生の顔を見上げると私の目を真っ直ぐ見ていた。




相澤先生はあの事件と私の両親の事を知っている。

雄英に入って担任になったのはたまたまだけど、個性のタイプが似ているせいか一年の頃からよく気にかけてもらっていた。
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