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嘘つきのヒーロー

第7章 蝕み


【心操人使side】

次の授業の日、幻想は少し調子が悪いようだった

簡単な演習でもつまずき
いつものような聡明さはない


クラスの女子が何人か体調を心配して声をかけていたが
幻想は「大丈夫だよ」と言うだけだった


少しクマがあるように見えた
ちゃんと寝ていないのか?


何度も声をかけようかと思ったが、やめた
あいつにも事情があるのだろうと思ったから


そんなことを考えていると、あっという間に一日は終わる




いつものように特訓の場所に向かおうとすると、相澤先生から連絡が入った

「悪い、20分ほど遅れる。自主練しててくれ」


不思議に思いながらも返信をして、場所に向かう
すると途中で、先生と幻想が話しているのを見かけた



「なに…話してんだ…?」

思わず物陰に身を隠すと、微かに声が聞こえてくる



「大丈夫です」

「大丈夫じゃねえだろ、」

「大丈夫です、ほんとに」

「大丈夫大丈夫って言うやつは大抵何かあるんだよ」



少し顔を覗かせると、幻想が俯いているのが見えた

今日のあいつの様子について、先生が何か言ってるのか?



「…ったく、じゃあ話せるようになったら言ってくれ」

「…はい」


相澤先生がそう言うとこちらに近づいてくる

やばい、こっちにくる

そう思い急いで逃げようとするが背中から声をかけられた



「おい心操、さっきから見えてんぞ」

そう言われ振り返ると、相澤先生が俺を睨む


怒られる
そう思ったがよく見るとそんなに怒っているわけではないようだった



「すみません、たまたま通りがかっちゃって」

「いや、あんなところで話しているのにも非はあるからな」

そう言って相澤先生は頭を掻いた



「なにか、あったんですか」
聞いていいのかいまいちわからずに相澤先生の反応を伺う

すると先生はため息をついて


「…あいつは何かあるとすぐ焦るからな、何があったのか聞いてたんだよ」



幻想のことを心配しているようだった


俺はその顔を見て昨日の幻想を思い出した
部屋の前での不安そうな、怯えた顔…

なにがあったんだ?



そう考えていると相澤先生は小さく呟いた。


「焦ったって、今以上の自分になれるわけじゃない」



その顔はとても真剣で、
言葉の重みを理解するにつれ、幻想への心配は大きくなった。
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