第4章 不器用なやさしさ
「確かに心操は一対一であの形式ならやり辛かったと思う」
そう聞いて、頭の中で整理する。
ああそうだ、俺は一対一では明らかに不利な個性だ。
暗くなっていく俺の顔を見て、幻想は僅かに哀しい顔をした。
「だけど、それは私もみんなも同じ」
「私も心操も他の皆よりハンデは大きい、その分何かで補わなきゃいけない。
…だけど、負けることにいい訳なんて…できない」
そう言われ握りしめた手に力が入っていく。
その通りだ、俺だけがハンデ背負ってるわけじゃない。
そう話す幻想は、何だか悔しそうな顔をしていた。
いい訳…俺は自分の個性を言い訳にしてたのか。
確かに俺もこいつも攻撃力はさほどないし、個性が割れてる時点で他の皆と比べて圧倒的に不利だ。
ああ、こいつ俺に個性のタイプが似てるんだ
「このノートは私情で用意したけど、二年の授業に一年の範囲が入るのは本当だよ。だから今はおとなしく受け取った方が後から勉強しなくていいから合理的だよ」
そう言われ、持っているノートに視線を落とす。
確かに…そんなことに時間を割くわけにはいかないか
「…そうだな、もらっとくよ、ありがとう」
そう言うと幻想は嬉しそうな顔をした。
「じゃあね」
幻想はそう言って教室を後にした。
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自分の部屋に帰りノートを開くと、びっしりと字が書かれていた。
あまりに緻密にまとめられたそれを見て、驚きながらもページをめくる
個性の応用の仕方
今まであった個性の種類と対策
状況別のヒーローの対応
めくってもめくっても丁寧で滑らかなその字が尽きることはない。
なんだか自分は凄いものを見ているような気がして、
1ページ1ページ丁寧に目を通した。
一年間の差は俺が自分でどうにかできるようなものではなかった。
あいつは一年間こんなにいろんなことを学んだんだ。
このノートを見てそう感じた。
俺はしばらく幻想のノートを借りることにした。