第3章 出会い
「さて、えっと…鯉伴様、でよかったですか?」
「ん、にしてもよく化けてるもんだなあ…」
そう言いながら鯉伴は水木をまじまじと見ていた
「あまり見ないで頂けますか…?恥ずかしいというか…」
「ああ、それはすまねえな」
「いえ、まあ確かに妖の中には人間に化けるのが下手な種族もいますものね。
私、妖狐なので変化は得意なんですよ」
近くにあった食事処に入り、食事をしながら会話をしている二人
「へえ…で、前は何であんなに急いでたんだい?」
「あの時は…近くにいた人間がたまたま陰陽師の系譜の方で…妖狐だってことがバレてしまって追われていたんです。」
「…容姿も妖気も随分上手く隠してるように見えるが…」
「はは…たまにドジしてしまうんですよね。気付いたら妖気が漏れてるとか…」
「そうかい。で、一つ聞きたいんだが…」
「?何でしょう」
「オレは江戸にいる妖は大概覚えてる。だが、お前さんのことは見たことがない。
…お前さん、一体どこから来たんだい?」
鯉伴がそう言うと水木は驚いていた
「…どこから来たか…一応京都にはなりますね。
京都の方に住んでいたのですが、訳あって江戸に引っ越そうと思いまして」
「随分と遠出したもんだな」
「ええ。京都の治安がかなり荒れていて…」
そういった水木の笑顔はどこか引きつっていた
「ところで水木、お前さん住む家はあるのかい?」
「あ、いえ…無いんです。
まだ宿も見つけれてなくて…」
「ならこの数日どうしてた?」
「犬とかに変化して…野宿してました」
「そうかい…なら、ウチに来るか?」
鯉伴がそう言うと水木がそれはとても嬉しそうな顔をしていた
「いいんですか?!」
「あ、ああ…」
「ありがとうございます、鯉伴様」
そうして、水木は奴良家に居候をすることになった
鯉伴が水木を屋敷に招いたのには理由があった
一つ、水木の身の上が少し怪しかったこと
二つ、京都からわざわざ江戸まで来るほど京都とその周辺の治安が悪いのかということ
三つ、さすがに女性に野宿はさせる訳にはいかなかった
そんなこんなで水木が居候を始めて数ヶ月が経とうとしていた