第3章 出会い
それは数百年前…鯉伴が山吹乙女と出会う前のことだった
「親父〜、ちょっと出かけてくらぁ」
欠伸をしながら歩いていくのは奴良鯉伴、奴良組の二代目総大将だ
「今回はどこへ行くつもりじゃ?」
そう言って鯉伴に訪ねるのはぬらりひょん、奴良組の初代総大将だ
「んー?さあな、気の赴くままフラーっとな」
「ワシは今から珱姫とでぇとに行く。邪魔するなよ」
「誰も邪魔しねーよ。じゃ、行ってくるぜ」
鯉伴が奴良家の門をくぐる
「さて、どこに行くかな」
のらりくらりと街を歩く
いつも通り街を散歩してカラス天狗に見つかる前に屋敷に戻る予定だった
目の前から一人の女が走って来る
前を見ず、ちらちらと後ろを振り返りながら走り続けていた
ちなみに鯉伴も店を見ながら歩いていた為、お互いが前方不注意だ
ドンッ
「いったた……あ、すみません大丈夫…ですか?」
そう言って衝撃と共に転けた鯉伴に手を伸ばす女
「…あ、ああ」
鯉伴もその手を掴んだ
「前あんまり見てなくて…すみません」
「いや、オレも周りみてなかったからな」
「その、お怪我とか…ないですか?」
女が少し焦った様子で鯉伴に尋ねた
「ああ、大丈夫だ。お前さんは…」
「あ、私は大丈夫です。ぶっかってしまってごめんなさい、このお詫びはいずれ」
そう言って女はパタパタと走り去っていく
「…?あの女、妖か?」
去り際に感じた微かな妖気
近くに妖はいないはずだ
そんなことを思いながら鯉伴は女が去った方を見つめていた
それから数日後
再び鯉伴は街を散歩していた
「あ、あの…」
後ろから女に話しかけられた
「おめぇ…あの時の…」
「あの時はすみませんでした。」
「いや、気にしちゃいねえが…」
鯉伴がそう言うと女はホッとした表情を浮かべた
「ありがとうございます。その、もし良ければ…ご飯でもいかがでしょう」
「?構わねぇが…」
「あ!私ったら名乗りもしないで…水木って言います。
気付かれてるかも知れませんが…妖で…」
「ああ、オレの名前は奴良鯉伴ってんだ、やっぱり妖だったか」
鯉伴がそう言うと水木は頷いていた