第7章 四国八十八鬼夜行
『私が護りたいだけ…目の前で誰も死なせない為に…』
何も知らずに、何も思い出せずに…目の前で力尽きるお父さんをただただ見るだけ
私こそ、もっと力があれば…しっかりしていれば…助けることができたかもしれないのに
あの日のことを何度夢に見ただろう
もう、そんな思いはしたくない
誰も…死なせなくない、なくしたくない
そんな思いがいつも込み上げてくる
「姉さん…」
『リクオ、みんなが待ってる。早く行きな?』
私はニッコリと笑ってみせた
「サクラ様…」
ゴンッ
後ろから殴られた
『っ…』
痛すぎて涙が出そうだ
「お前はアホか?バカか?」
殴ってきたのは鴆だ
『は?』
「自分の命も疎かにするやつが、護りたいだ?
ふざけんなよ。
お前一人でこの組を、お前の大切なものを護れるわけねぇだろ!!」
鴆に怒鳴られる
「お前ら姉弟揃って一人で抱え込むからそうなるんだろ!!
少しはオレらをたよれや」
「鴆くん…」
『私にも百鬼を集めろって?そう言いたいわけ?』
「そうだ」
『無理よ、何年も何十年も…何百年も行方知れずだった私を…受け入れてなんて言えない。』
ましてや…時が来たら奴良組を裏切る…敵に回るのだから
「サクラ様!私は、サクラ様を…『氷麗、リクオ』」
氷麗の言葉を遮る
『二人とも、早く行っておいで。これ以上みんなを待たせちゃだめよ』
私がそう言うと二人とも渋々部屋を出る
再び鴆と二人きりとなった
『余計なこと、言わないでくれるかしら?』
「お前は何を恐れてる。いや、行方知れずだった間に何があった」
『あなたには言えない。ううん、誰にも言うつもりは無いわ。
もう、いいでしょう?私は私のやり方で…』
ぐわん
視界が揺れる
「おい!」
目がチカチカする
ダメだ、倒れそう…
さっき鴆が殴ってきたのが効いたのだろう
いつもなら何ともなかっただろうが、不眠状態だった私の脳を揺らすには充分だったらしい
倒れちゃダメ…今ここで倒れたら…
私は何のために…
必死に意識を保とうとする
『だ…め…』
私はそのまま意識を手放した