第7章 四国八十八鬼夜行
リクオside
姉さんと鴆くんの会話を聞き、自分がいかに無力なのかを再度認識させられた
ボクは…
「ダメだ、だからこそ…しっかりしないと」
着替えを済ませ、盃の用意された部屋へ向かう
この妖怪任侠世界では、種族の異なる妖怪同士が血縁的連帯を結ぶもの…
本来、じーちゃんや父さんの代でこの組の百鬼となったみんなは…義兄弟の盃である五分五分の盃を交わして対等な立場となるはずだった
だけど、今回…みんなは七分三分の盃を選んだ
七分三分の盃は忠誠を誓う、という親分子分の盃
本当にみんながボクを信頼してくれなければできない契りだ
それから順番に青田坊、黒田坊と盃を交わす
次は首無だ
「リクオ様、どのようなリクオ様でも私たちは受け入れます。信じてついて来たこの家の…"宝"なんですから。
自分に正直に…生きてください」
そして首無の次は氷麗だ
ボクは、ボクの本当の気持ちは…
そうだ、ボクは知っている…あいつもまたボクの"本音"の一つなんだって
突然風が吹く
ふと庭を見ると桜の木が揺れていた
ボクは目を疑った
桜の木には夜のボクがいた
《オイ、昼のオレ。人間ごときのお前に…何が出来る?
夜はオレの領分なんだよ。そこを…どけ》
「…君に、全てをゆずるつもりはないよ。
君のようになるのは難しいな…君は強くて、恐ろしくて…怖いから。」
《そうだな。お前は人間どもとじゃれ合ってるのがお似合いだよ。
…人間のことはお前にまかす。》
夜のボクはそう言うとグンと近付いてきた
ボクの頭に手を置くと彼はこう言った
《だから、"妖怪"はオレにまかせろ》
そうだね、頼んだよ。夜のボク
「若」
氷麗が驚いたような顔をする
「どうした、盃…受けねぇのかい」
「え…あ…はい…」
「よろしくたのむぜ、つらら」
「若…!?急に変わりすぎです…」
オレについてくると言った妖達と盃を交わし終え、姉貴の部屋へ向かう
「姉貴」
姉貴の部屋の襖を開けると、そこには鴆がいた
「鴆、姉貴は…」
「今さっき寝たところだ…いや、気を失ったところだな。
今は薬飲ませたからしばらく起きねぇぞ」
「そうか…無理させちまったな」