第5章 奴良組
「…サクラ様はリクオ様のことをどうお考えですか」
とても直球に鴆が聞いてきた
『どう考えているか、ですか?』
「今このタイミングで出てこられた…ということは三代目を継ぐおつもりですか?」
『…まだそこまでは考えていません。三代目はリクオが継いだ方がいいとは思っていますが…本人にその意思が無いのであれば、考えるべきことは多いかと思います』
てか、私継ぐ気ないんだけどね
「そうですか。」
『鴆さん、リクオのことお願いしますね』
私がそう言うと鴆はとても驚いていた
「…もちろんです。私に敬語は不要ですよ、サクラ様。それにさん付けもやめていただきたい。」
『ふふ、そっか…ありがと、鴆。』
鴆が満足そうに部屋を後にしていく
「サクラ様」
カラス天狗が話し掛けてきた
『何、カラス天狗』
「屋敷の者への挨拶はどうなさいますか」
『あ、確かにしないとダメね…。どうしよう…』
「今日すぐには難しいですが…」
『なら、また明日以降にしましょう。』
「承知致しました。あ、そういえば今、リクオ様のご学友が屋敷に来ておりまして…」
『リクオの友達が?』
「ええ。リクオ様はご学友にこの屋敷が妖の住む屋敷だとバレたく無いようでして」
『そっか。なら、隠れておかないとね』
私は念の為、人間の姿に変化する
「そちらの姿ですと、鯉伴様に瓜二つですなあ…」
『そう?あ、そうだカラス天狗、私の部屋ってある…?』
「もちろんでございます。部屋に戻られますか?」
『そうね。少し休ませて』
幹部会は思っていたより気を張っていたらしい
疲れがどっと来た
「では、こちらへ」
カラス天狗に連れられ、屋敷の奥へと進む
懐かしい匂いがした
『ここ…』
「鯉伴様のご意向で、ずっと残してあったのですよ。
もちろん、何度か改装を重ねましたが…」
カラス天狗が襖を開く
そこには懐かしい部屋があった
私の為に…残してくれてたんだ…
『……っ…』
目に涙が溜まる
「サクラ」
いつの間にかおじいちゃんが横に立っていた
『…、おじ…ちゃん…』
「おかえり」
『…ただいま…』
おじいちゃんは少しのあいだ背中をさすっていてくれた