第5章 奴良組
もちろん、ぬらりひょんの畏である鏡花水月を発動していた為、怪我も一切負うことはなかった
『…これでわかってもらえたかしら、一ツ目?
別に今の件は罪に問うことはしないわ。』
「…っ…申し訳…ありません。」
一ツ目はそう言って大人しく元いた位置に座った
『理解してもらえてよかったわ。さ、本題を話しましょうか』
そこから昨日起こった旧鼠の件についての話が始まった
「"回状を廻せ"という指示は…破門した組の者が言っても何の意味もない。おそらく旧鼠は誰かに飼われていたんでしょうな。」
「それはリクオがまた妖怪になったというのにそれを"よし"と思っとらん奴なんじゃろーのぅ…
この中にも…おるんじゃろーなぁー…」
おじいちゃんがわざとらしくそう言った
『…リクオの能力としては疑いようがないのでしょう?
例え夜の間しか妖怪になれないのだとしても…むしろ私達妖の本分は夜だし…特に問題ないのでは?』
私がそう言うと一部の幹部が不満そうな顔をした
『いずれにせよ、今回の旧鼠の件に関しては調査させてもらうわ。
何か質問のある者はいるかしら。』
特に意見が出ることも無く、幹部会は解散となった
幹部達が帰って行く中、一ツ目がこちらに近付いてきた
『…何かしら、一ツ目』
「さっきは…その、すまなかったな。」
『こちらこそ、煽るような真似してごめんなさいね。むしろ証明をする機会をくれて助かったわ』
「にしても、鯉の坊に似てきたなあサクラも」
そう言って横から話に入ってきたのは狒々だった
『久しぶりね、狒々』
「おうよ、元気にしとったか」
『ええ、もちろん』
「知らん妖も増えただろう。少しずつ覚えていけばいいと思うぞ」
『そうなのよ。沢山妖が増えてて驚いてたところよ。
狒々、一ツ目…これからよろしくね?』
「ああ、任せておけ」
「……フン」
一ツ目はツンデレになったというか…めんどくさい近所のおじさんって感じだな
さて、調査に関してはおじいちゃんがカラス天狗に何か伝えてたみたいだし、そっちに任せておいても大丈夫そうね
少し考え込んでいた時だった
幹部である一人の妖に話しかけられた
「…お初にお目にかかります。薬師一派の組長を務めております、鴆でございます。」
『初めまして、奴良サクラです。』