第5章 奴良組
ふと庭を見ると枝垂れ桜が綺麗に咲いていた
『綺麗…』
ずっと咲いてるんだね、あの桜は…
私の小さい頃にも何度か咲いているのを見た事がある
何故かあの桜は花が咲いている期間が他の桜よりもとても長かったのを覚えている
「こちらですぞ」
カラス天狗はそう言って私を部屋に入れてくれた
「さて、まずはこの組にきた目的を話して頂きましょうか。」
部屋に入り、座って直ぐにカラス天狗が私に尋ねてきた
『…目的…戻ってきたかった…から?』
「はい?」
わー、カラス天狗睨んでくる…
『正直に言いますね。私の名前は奴良サクラです。信じてもらえないかもしれないけど…奴良鯉伴の娘です。』
私がそう言うとカラス天狗が持っていたお茶を落とし、勢いよく私の顔の前まで飛んできた
「…サクラ…様?!本当にサクラ様なのですか?!」
『そう言ってるじゃない…』
「いやしかし偽物という可能性も…」
疑うよねそりゃ、何百年も行方不明だった二代目の娘が突然現れたらまず疑うよね
『えっと…カラス天狗?』
「何ですかな」
『その、証明をするのであれば…畏を使うとかも、できるけど…』
「…信じるしか無さそうですな。ただ…幹部会の方では証明して頂くことになるでしょうが…」
『!信じてくれるの?』
「ええ、おかえりなさいませ…サクラ様」
『ただいま、カラス天狗』
「で、一体今までどこにいらっしゃったんですか」
『それは秘密…かな。詳しい話は…全部落ち着いてから話すから…』
「…やはり事情があったのですね…その、水木様は…」
『お母さんは…私がこの屋敷を出てすぐに亡くなったと聞いているわ。』
「そうでしたか…。その、鯉伴様も…」
カラス天狗がとても言い辛そうにこちらを見ていた
『風の噂で聞いていたわ…最期に会えなくて…残念だったわ…』
「サクラ様…」
『おじいちゃんは元気?』
「それはとてもお元気ですよ。それに…鯉伴様にはもう1人お子様がおられまして…」
『え、弟?妹?』
本当は知ってるけどね
「弟君でございます。今は12歳ですので歳の差が…」
歳の差…いや、まあ仕方ないけどね…