第8章 始まりの始まり
「で、旭さんは?戻ってますか?」
西谷が澤村と菅原の方に向き直り尋ねた。
澤村と菅原は俯き一度言葉を詰まらせると、
いや、
と一言だけ答えた。
「あの根性なし!」
急に怒りと悔しさを表情に表した西谷がそう叫ぶ。
『わっ!え、誰?』
「こらノヤ!先輩をそんな風に言うんじゃねえ!」
「うるせえ!根性なしは根性なしだ!旭さんが戻んないなら俺も戻んねえ!」
「おいこら!ノヤ!」
田中と言い合いをした西谷は体育館を去っていく。
『え?追いかけないんです?』
が問うが、2.3年は俯いたまま動かない。
『じゃあ私が行こうっと』
「お、おい!!」
『だってチームメイトですよね?じゃあいてもらわないと。何があったか聞いてる暇今ないんで戻ってきてから詳しいことは聞きます!』
「!おれもいく!」
が体育館を出て行き、日向もそのあとを追った。
『西谷先輩〜!』
の声に、ん?と振り返り、と日向かどうした?と西谷が尋ねる。
「西谷さんってリベロですよね?守備専門の」
『あ!私が先にお話ししたかったのに横取りするな翔陽!』
と日向の会話に僅かに表情を和らげた西谷が口を開いた。
「なんで俺がリベロだって思う?ちっちぇえからか?」
『いや、レシーブが上手いから。
さっきだって最初からコートの中にいたわけじゃないのに、すぐにボールの落下地点に入り込んだし、咄嗟の体制だったのにボールの回転も勢いも体全部を使って吸収してた。
身についた技って感じでした。長い間ずっとリベロとして戦ってきたんだなって一目でわかりました』
「...、お前あの一瞬でそこまで見て分析したのか」
『え?あ、まあ』
「すげえトレーナーがうちに来たもんだな!」
「あ、そ、それにキャプテンも西谷さんのことうちの守護神って言ってましたし!」
日向が付け加えるように言うと、たちまち西谷の顔は喜びと照れの感情で染まる。
そ、そんな大袈裟な〜大地さんてば〜とあからさまに照れたように頭をかく西谷。