第2章 豹、全国へ行く
ピーッ!
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
皆は今まで以上の力を出して戦った。
普段の可動域よりも1m先のボールも拾った。
普段よりも3センチ高く飛んでブロックした。
それでも、
圧倒的攻撃力を持つのレフト不在は大きなものだった。
結果。
豹紋中学校、女子バレーボール部はフルセットの結果敗北した。
全国4位だった。
そして、中学のバレーボール人生は幕を閉じた。
『皆ありがとう。よく戦ってくれて。あなたたちがチームメイトだったこと一生誇りに思う』
謝るなと皆の顔が語っていたから、の口から謝罪の言葉は出なかった。
謝罪以上に皆に伝えたいこと。
感謝を、1人ひとりの目を見つめながら述べる。
の言葉にチームメイトたちはダムが決壊したかのように、耐えきれなくなった大粒の涙をこぼしはじめた。
『高校バレーでみんなの活躍が見れることを祈ってるよ』
謝るなと言われても、から罪悪感が消えるわけではない。
せめてもの償いとまではいかないが、皆の将来を祈ることしか今のはできなかった。
ただ、
「、っ、でも、っ」
「、、なんで、なの、、!」
皆が悔しがる理由は、試合に負けたことだけではなかった。
それは、
がもうバレーをできないほどの怪我を負ったからだった。
勢いを殺せずに着地に失敗したせいだ。
すぐに大きな病院へ、そういわれて駆け込んだ近くの病院医師からの診断は膝前十時靭帯損傷。
もう、激しい運動はできないと医師にそうはっきりと告げられた。
「、、、っ。、、。」
本人よりも苦しそうな、そして悔しそうな表情で皆がを見つめる。
ああ、こんなにも。こんなにも、私を大切に思ってくれる仲間がいた。それだけでもう、
私のプレーヤー人生は幸せだったのだ、とは思った。
『私は大丈夫』
笑顔を作って言ったが、なにが大丈夫なのかはにもわからなかった。
ただ、そういわないと崩れてしまいそうだった。壊れてしまいそうだった。