第10章 烏野、完全体へ
『今は今でもちろん、本当に心から楽しいしやりがいも感じてるし、私は幸せ者だと思う。
失ったものは戻ってこないし、今あるものを大切にすることが本当に大事なことですしね。
でもたまに思います。
もしプレーヤーのままでいたなら。
まだバレーボールの試合に出ていたらって。
認めないように、気づかないようにしてたけど、これが私の本音です。
じゃあはいっ!次は東峰先輩。』
そういうとはボールを東峰に渡した。
東峰はボールをじっと見たあとを見つめ、そのあと顔を正面へと上げた。
「...思うよ。
何回ぶつかったとしても、もう一回、打ちたいと思うよ。」
西谷の表情が驚きの表情へと変化し、そのあとふっと微笑んだ。
「...それなら、いいです。それが聞ければ十分です。」
は2人の様子を見ると、東峰の手からボールを取り日向へと投げた。
『じゃあ、再開で!翔陽ナイッサー!』
スタスタと繋心の元へとが戻ると、繋心は険しそうな顔をしていた。
『...そんな怖い顔しなくても、ほんとの気持ち言わなかったことに対するお説教は後でちゃんと聞くよ。
繋心くんがおごってくれる肉まん食べながら』
「...なんでだよ」
少し柔らかくなった繋心の表情を見て、はコートへと向き直った。