第8章 始まりの始まり
東峰のその言葉には首を傾げた。
『どういう意味ですか?』
「...俺は、逃げたから...
だからもうエースの資格はない」
『うーん、細かい状況を知らないからまあ断言はできないですけど、それは違うんじゃないですか?』
東峰は自分が作り出した重い雰囲気をものともしないに少し驚きつつ、
え?と聞き返した。
『エースってチームの要ですよね。大黒柱みたいな。大黒柱って一番支えるものが多いじゃないですか。つまり、周りが一番頼りたいと思う存在。
烏野バレー部の皆があなたのことを待っている。東峰先輩の存在を頼りにしている。
その事実だけで十分エースじゃないですか。
自分がどう思ってるかもまあ大切だとは思うけど、
周りから見たときの存在の大きさもエースにはとっても重要ですよ。』
ずっとモヤがかかっていた不安や、罪悪感が晴れた気がして東峰は少し泣きそうになった。
「東峰ー!進路指導呼ばれてないのか〜」
とそのとき、空き教室の中から東峰を呼ぶ先生の声が聞こえた。
『あ!呼び止めちゃってごめんなさい!でも少し私の言ったことも考えてみて下さい。
それと!そのとき何があったかはわからないけど、私は羽ばたかせますよ!烏野を!』
東峰はこんなにも大きい自分が小さく見えてしまうくらい、
の笑顔は頼もしく、輝いていると思った。
ペコリとお辞儀をしたがスタスタと職員室の方へ歩き出したのを見て、
東峰も先ほどとは少し晴れた気持ちで進路指導へと向かった。