第11章 Prey (観察対象は監督生さん)
「うちはミスドじゃないんですよ」
料理が来るまでの間、勉強を教えてもらったせいか机の上はペンや問題集が散らばっていた。
遠目に給仕をしているジェイド先輩の姿が見える。
ジェイド先輩が仕事に遅れたのは
私に勉強を教えてくれたせいで…
申し訳ないから私も働くとアズール先輩に懇願すると、「ダメです!貴女が働く日にちはマジカメで告知済みなんですから!」「貴女は商売というものを分かってない」とプンプン起こりながら眼鏡をクイっと上げた。
「商売も分からないし、
勉強も分からないんです…。
なんで、この回答はこうなるんですか?」
はむはむと頂いたサンドイッチをかじりながら、
しおらしく、寮服の裾をちょんちょんと引っ張って、教えてほしいとおねだりしてみる。
「はぁーー。しょうがないですね。
どこですか?」とユウの隣に詰めるように座って問題集を見てくれた。
これにはユウもフロイドもニッコリ。
なんだかんだ面倒見のいい
アズールの行動が嬉しくて、
「唐揚げ食べます?」と
お皿に取り分けてあげる。
「貴女!聞いてるんですか?
この僕の貴重な時間を割いてあげてるのに
…ふぐっ!…フロ、イド!っっ…。
唐揚げを無理やり口に突っ込むな!」
「あははっ!タコちゃん顔真っ赤~」
「フロイドッ!!」
怒り狂うアズール先輩の口元をナプキンで拭ってあげれば、
「…これは失礼」と少し冷静に戻ってくれた。
「いつまでも遊んでないで、
キリキリ働きなさい!
サボってた分は給料から引いておきますからね」
「ふぁ~い。
じゃあ、オレ行くわ。またね、小エビちゃん♡」
目の前で肘をついて座っていた
大きな体を揺らして
フロイド先輩がキッチンに戻っていく。
「……全く。
それにしても、
最近ジェイドがよく
そちらにお邪魔してるようですが
いじめられてはいませんか?」
(おかあさん)
「あいつはフロイドより、タチが悪いですからね。
貴女も気を付けなさい」と言って、
目の前の唐揚げを食べ始めた。(食べるんだ…)
ユウはジェイドが契約のことを
アズールに話していないと知り、
自分が話していいものなのか悩んだ。
悩んだ末、ジェイド本人が彼に話さない限りは
こちらから言うべきではないという結論に辿り着く。