第11章 Prey (観察対象は監督生さん)
「では、各国の情勢を知ることから始めましょう」
海のデザインが綺麗な椅子をユウの隣に置き、ジェイドも同じ机に向き合った。そこで一枚の紙を差し出す。
「まず貴女の知識がどの程度あるのか知りたいので、簡単な問題を用意しました。これを解いてください。当たり前のことばかりで手ごたえがないでしょうが」
「が、頑張ります!」
渡された紙は薔薇の国、輝石の国などワンダーランドにある有名な国々の魔法史の歴史に関してだった。
(私のつたない知識で太刀打ちできるかな)
◆
採点を終えると、ジェイド先輩は感心したような表情で顎に手を添えた。
「……さすがに度肝を抜かれました。
貴女には毎回驚かされる」
「よかった!…満点ですか!?」
「逆です」
(わっ……)
耳たぶを指でピンと弾かれ、とっさに手のひらで耳を隠す。
「貴女の耳と目は飾りですか?
本当に……。よくこれまで生きて来れましたね。
世界的に有名な妖精ゴットマザーの
魔法の呪文が『ちちんぷいぷい』とは…。
あまりに斬新すぎて涙が出そうです…」
「む、無回答よりいいかと思って!
ほとんどの問題が解けなかったので、
せめてやる気だけでも見せようかと…」
「なるほどなるほど。
なかなかに鍛えがいのある、おつむですね」
(……っ)
あやすように頭をひと撫でされ、
反抗心がむくむくと湧いてくる。
「子ども扱いしないでください!
ちゃんと勉強すれば世界情勢くらい理解できます!」
「…言いましたね?」
(あっ……これは、ヤバイ奴)
見事、言動を取られた瞬間だった。
◆
(頭がパンクしそう……)
数時間後、集中力を使い果たした私は
机につっぷしていた。
「ユウさん、まだ講義は終わっていませんよ」
「情報量が多すぎます…。
明日のテスト範囲外も含めて、
魔法元年からの一気に覚えろだなんて」
「まだ前置きの段階で、
泣き言を言われてはお話になりません」
(ぶっつづけで講義して、
まだ前置きなの…!?)
普段ニコニコと優しそう
なんて思った自分が馬鹿だった。
ジェイド先輩のスパルタ講義に
早くも音を上げそうだ。