第10章 The Little Mermaid(陸の人魚姫)
「小エビちゃんと一緒に働けんのっー?!
なにそれ面白そぉ~♡オレも行く~」
「いえ、まだ本人の承諾は得ていませんが…。
マ、お人好しな彼女なら引き受けてくれるでしょう」
その方が観察もしやすい…。
自分の管理下で、彼女の秘密を暴けるかと思うと
背筋がゾクゾクと震えた。
そんな自分の片割れを見て、
「うわぁ…」と引くフロイド。
あの顔のジェイドが考えていることは
大抵ヤバイ。
いつもだったら、「ご愁傷様~」と
見捨てられるけれど…
自身も可愛がっている小エビが相手だと思うと、
フロイドも黙っていられなかった。
「最近小エビちゃんのことばっかじゃね?
なに、好きなの?」
その問いかけに、そんなこと考えていなかったとばかりに珍しく目を見開いたジェイドがいた。
だが、すぐに
いつも通りのポーカーフェイスに戻る。
「まさか」
「ふーん」
「ですが。
……夢中なんです♡」
惚れた腫れたなんて安っぽい恋愛感情ではない。
だが、ジェイド自身も説明できない程
予測を裏切り続けるユウに
興味が尽きないのは本当のことだ。
「フロイドだって同じでしょう」と言われれば、今度はフロイドが返す言葉を失った。互いの好みはそれぞれ違うものの、ユウへの興味や執着心は同じが、それ以上だろう。
そこまで考えたら、もう「飽きた」。
気分じゃなくなったフロイドが立ち上がって、
手をヒラヒラと振る。
「それでは、放課後に」と
ジェイドは最後まで笑っていた。