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【ツイステ】監督生はプリンセス(長編)

第10章 The Little Mermaid(陸の人魚姫)



学園の一年生の廊下を歩いていると、
ざわざわと生徒達が囁く声が耳にこびりつく。

「オイオイオイ!あれどーなってんの?」

「さあ…僕にもさっぱり」

普段であればメインストリートでエーデュースと合流して、教室までしょうもない話を駄弁って歩くのが日常だった。

だが、今日は違った。

小エビの名前の通りビクビクしながら歩くユウと、彼女とは正反対にニッコニコな笑顔で隣を歩くジェイド・リーチの姿に皆度肝を抜かれる。


グリムの姿が見当たらないのを見て、エースは「あの野郎、逃げやがったな…」と心の中でココにはいない狸に中指を立てた。

アズールのオーバーブロット事件以降、モストロ・ラウンドで朝昼晩こき使われ、双子のウツボから心身共に絞められた記憶がエースとデュースの中ではこびりついて消えない。


なので、いまだこの先輩を見ると反射的に
”関ってはいけない””と
脳が体中にシグナルを送る。


悔しいかな…そういうわけで彼らは、いつも自分達が独占しているユウの隣の居場所。つまりジェイドの背中を見ている事しかできなかった。

本人たちは気づいていなかったが、周りの生徒から見たエーデュースは悔しそうにハンカチ噛んで「キィーッ! 誰よあの男!」と今にも叫びそうな表情だったと言う。


「これからは毎朝、お迎えに上がりますね」

「「(…はァっ?!毎日……?!)」」

「えっ……。そんな!

先輩も大変だと思うので、

そこまで無理しなくても…」


「僕が好きでしていることですので、

お気になさらずに。

それに、

ウツボは通うことが苦ではありませんので」



「はあ…。観察ってやつですか?」



ジェイドは言葉を話さない代わりに
「ふふっ」っと
いつもの微笑みを浮かべた。





(はあ、気が重い……。)

やっとの思いで1-Aの教室に辿り着いた。

物腰柔らかな先輩かと思っていたけど、ユウがどれだけ「ココまでいいです!」と言っても「教室まで送ります」の一点張りで、全く聞く耳を持ってくれなかった。

ジェイド先輩は意外と頑固者だと

認識を改めなきゃいけないなぁ…。


彼に怯えた生徒たちから向けられる

様々な視線に窒息しそうだ。

ジェイドがいるだけで

小魚が散る如くサッと道を開ける姿に

ユウは眩暈がした。

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