第3章 Daily life(監督生といつもの日常)
私の膝でぴょんぴょんとはねて、必死に肉球でコントローラーをこねているグリムが可愛い。
私は早々に負けてしまい、今はグリムとデュースとの一騎打ちをTVごしに見守っている。
「ココ(オンボロ寮)もずいぶん変わったよな~」
同じく負けてつまらなさそうにコントローラーを投げたエースが、かまって欲しそうによって来た。
「デュースとグリムと協力して掃除頑張ったんだよ。リドル先輩とかイデア先輩も手伝ってくれて…
どっかのだれかさんは、掃除とか絶対ヤダ~って言って聞かなかったけどね!」
「ハァ?!
…デュースいつの間に抜け駆けしたわけ?」
「抜け駆けとは失礼な。
サボり魔エースと一緒にするな」
「デュースは、購買のセールにも一緒に来て荷物持ち手伝ってくれるし、壊れた家電も直してくれるんだよ。
一家に一台デュースくん!」
そう言って今もTV画面に夢中なデュースの背中に抱き着いた。
「ッッッおぃ、ユウ!!
いきなり抱きつくなッ!」
背後からの抱擁に、やかんが沸騰するがごとく顔を真っ赤に染めるデュース。心なしか柔らかい感触がデュース・スペード (16歳・童貞)に襲い掛かる。
そんな思春期の男心をちっとも理解してないユウは、犬猫の相手にするように「よしよし。可愛いやつめ」と頭をなでて無意識に追い打ちをかけていた。
「男相手にもっと警戒心持てっつーのッ!」
唯一デュースの心情を理解し、かつ(羨ましいにも程があんでしょ!)と内心逆切れしたエース・トラッポラ(16歳・童貞)は急いで目の前の二人を引き剝がした。
「えー」と不満そうだが、しぶしぶ離れるユウ。
男子校に女子生徒一人ということで普段警戒している分、俺たちには心許してくれてるみたいで嬉しいんだが、男として意識されないのもされないで複雑な心境だ。
「隙ありー!なんだゾッ!!
やったー!勝ったぁー!オレ様イチバーンッ」
デュースがポンコツになっている間に、一人で夢中になっていたグリムが、結局優勝したらしい。画面には「WINNER!(勝者)」とでかでかと映っている。
全く空気の読めない狸である。
「おい!もう一回やるんだゾ!」
「えー休憩しよー。お菓子食べるひとー?」
ユウもユウでケロッとしているので、意識しているコッチがバカみたいである。