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【ツイステ】監督生はプリンセス(長編)

第8章 Nasty mermaid(意地悪な人魚)



「ジェ、イド先輩…」

ユウの前に立っているのは
長身に見覚えのあるターコイズブルーの後ろ姿。

ドク、ドク、と心臓の音が大きくなっていく。

それを、獣達の咆哮がかき消した。


「しー……」

ジェイド先輩が人さし指を立てるのを見て、言葉の続きを飲み込んだ。

ガルル、グルル…!と威嚇音が周りを囲み、皆歯をむき出しに爪を立てる。あんな鋭い歯で噛まれたらひとたまりもない。

身震いがする中で、
唯一の味方であるジェイドの後ろ姿を見ると…

その体はいつも通り、凛とした佇まいで
今この場に最も場違いなくらい、上品だった。

(この人、全然動じてない。むしろ…)

その口元には、薄っすらと笑みさえ浮かべている。

「私、わたし…どうすれば」


「何も」


「え……」


「貴女はただ、僕の背中で震えていればいい。

いいですね?」



(たしかに
下手に動けば邪魔になるだけだけどっ…)


魔法も使えない。助けになるグリムもいない。

力だって人間の男に負ける。

獣人相手なら五分と持たないだろう。


悔しいが、今の自分にできたのは
ジェイドの言う通りにして、頷くことだけだった。



「良い子です」



ユウの頭をひと撫でして、
囲みこんでいる獣人たちに向き合った。


「ユウさん、耳はふさいでもいいです。


ですが、目だけは閉じないように」


「目を、ですか…っ?」


「これが、



無垢な貴女が



生き抜いていかなければいけない世界です」




ーそう言って意地悪な人魚は笑った。



困ったように眉を八の字にして、

口角を上げ

肉食魚にふさわしい歯をむき出せば…


それが合図かのように獣達は一斉に飛び掛かった。




(私、とんでもない場所に来てしまった)


この世界に来てから、何度、そう思ったことか。


一見すれば高校生同士の喧嘩になるのだろうが、ユウには想像とはあまりに違う場面にショックを隠せない。


まさに人外。


人間というよりも獣や魚に近い彼らは、人間であるユウには想定できない程、自然に近い。まさに弱肉強食の世界を体現しているかのようだった。


一方的な容赦ない暴力。暴乱。圧制。


その全てがジェイドによるモノだった。

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