第8章 Nasty mermaid(意地悪な人魚)
しかし、ユウがリドルの元へ辿り着く前に
クルーウェルが教壇に上がる方が早かった。
「子犬ども、授業を始めるぞ」
パシンっ…と鞭が床を打つ音で生徒全員が、
クルーウェルに注目する。
本日の課題である魔法薬の用途や、材料になる薬草の説明を簡単にした後、「学年ごとに二人一組のペアになれ。放課後までに課題を提出しない駄犬は分かっているな?…以上だ」と、言いたい事だけ言って早々に去っていった。
2年生は1年生への指導力も評価のポイントになる為、渋々だが自分の為にも面倒を見てやらなくてはいけない。普段なら絶対お断りだが。
クルーウェルがGOのコマンドを出した瞬間に、教室は一層入り乱れた。成績の良い先輩にあやかろうと1年生も必死だ。
ユウも急いでリドルの元へ向かう。
その途中でカリムとシルバーも「一緒にやろうぜー!」と手を振ってくれたが、ごめんなさいと両手を合わせるジェスチャーした。
「急ぐんだゾ!リドルが取られる!」とグリムが頼もしく先陣を走っていたが、突如長い脚に激突する。
「ふぎゃ゛ッ?!」
親分の悲鳴にユウの足もようやく止まり、何事かと視線を向けると目の間に壁があった。
…壁??
そしてカチカチと視線を上にあげていくと、
笑顔のジェイド・リーチがいた。
「「ジェイド先輩ッ!/フロイドッ?!」
ユウとグリムの悲鳴が同時に上がる。
どうやら親分が激突した長い脚の持ち主は、
フロイド先輩のようだ。
ここに来て邪魔が入るなんて…と、リドルの様子を伺おうとひょこひょこと左右に顔を覗かせようとすると、同じタイミングでジェイドが重なって向こう側が見えない。
くう…!そうやって私の反応を面白がって
遊んでるんだわ…!
ユウがどれだけ邪魔ですと視線で訴えても、
ジェイドは気にせず「ふふふっ」と笑うのだった。
「はぁ~い。アザラシちゃんはこっちね」
「ふ、ふふななあ…ッ!た、たすけろ子分!」
ついにはグリムを連れて、190cmの長身をユラユラ揺らしながらフロイド先輩も双璧として立ちふさがった。
「こんにちは、小エビちゃん♡」
「ごきげんよう、ユウさん」
「どうも、リーチ先輩……」