第8章 Nasty mermaid(意地悪な人魚)
しかしその中でも、魔法薬学の授業は一等得意で大好きだった。好きになったのも、魔力が必要ない数少ない授業で、誰に迷惑をかけることなく、自分の力で成し遂げられる部分が大きい。
元々細かい作業や暗記が得意なので、材料を覚えれば料理作りと同じ容量で作業することが出来た。
またユウ本来の持っていた、未知の物への果てしない探求心と、好奇心旺盛な性格がしっくりと嚙み合い
そこにクルーウェルの熱心な指導も加わったことで、無知の状態から平均点を叩き出す程にメキメキと成長していった。
しかし、授業自体は好きだが
先輩と組まなければいけない合同授業は憂鬱だ。
モンスターと学園唯一の女の子といえば、目立たない筈がない。さらに言うとこの学園には問題児しかおらず、一度絡まれると厄介である。
1年生だけだったらマブ達がいるから、気を使わなくていいのに…と内心ガッカリしていると、目の前の耳がピクピクと小刻みに動く。
「今日の材料一つ『灯火の花』の蜜が
結構高く売れるから、授業が楽しみっス!」
ラギー先輩であれば組んでくれるかなぁ?と
一瞬思ったがすぐにその考えは消えた。
以前、エースが授業中にラギーと一緒に小遣い稼ぎをして、大変な目にあったとボヤいている姿を思い出す。
なんでも我がオンボロ寮のゴースト達に、授業で余ったマンドラゴラを売りさばいていたとか。常に金儲けに繋がることを考えるのはさすが…と言うしかない。
「うーん、まだ決まってないので
私なんかでも
組んでくれそうな先輩に声かけてみます」
「………はぁ。
アンタってほんと
自分の価値ってもんを分かってないッスよね。
そんなんじゃ、あっという間に
ガブっ! っとやられちまうッスよ」
両手を頭の上に組んで「シシシッ」と笑うラギー先輩に苦笑いで返す。
「…相談によっては
オレが面倒みてやってもいいけど?
ユウくんなら、特別友情価格でっ!」
ニカッと歯を剝き出し、笑顔のラギーを見て(これはまずいぞ)と本能が告げた。黙っていたら商売上手なラギー先輩にマドルを搾り取られる。
ユウは一礼して
グリムを抱っこし猛烈ダッシュを決めた。