第8章 Nasty mermaid(意地悪な人魚)
ー学園 外廊下
制服から実験着に着替え、エース達と合流する。唯一女性のユウは空き教室を利用して素早く着替え、ふんすとかまえる門番のグリムにお礼を言った。
もう少ししたら着替える魔法も習えるらしい…。
魔法っていいなぁ。
グリムが使えるようになったらお願いしよう。
壁に背中を預けて待っていたエースが「持っててやるよ」と教科書を乱暴に奪っていく。彼の素直じゃない性格を知れば知るほど、可愛く見えてしょうがない。
「ありがとっ!」とお礼を言って、急いでいた為結べなかった長い黒髪を束ねる。体育や実験の際は、邪魔にならないようにポニーテールにしている。驚くことに、錬金術や魔法薬学の授業では髪も材料になることがあるそうだ。
ユウが口で髪ゴムを咥え、
髪をかきあげる仕草を
顔は前に向きながら
横目でガッツリ見ているエースとデュース。
オレたちだって、立派な男の子なんでね。
普段見えない真っ白なうなじが視界に入ると、
トランプ兵たちはドキッと高鳴る胸を抑えた。
(ユウって、肌白っー……)
エースは普段見慣れない
女性らしい仕草に色気を感じ、
(な、なななんかイイ匂いがするっっっっ!!)
デュースは、
髪をかきあげた時に香る、
いい匂いにキュンとした。
ユウが気づかず歩き続けるが
二人の脳内はハッピーお祭り野郎だった。
「みぃーちゃったぁ♡」
三人と一匹が同時に振り向ければ、そこにはシタリ顔で獲物を見つけて喜んでいるような顔のハイエナがいた。
「「ラギー先輩ッ!?」」
「ラギー先輩、こんにちは」
「シシシっ、こんにちはっス。ユウくん」
「エースくんとデュースくんも」と意味深な顔で挨拶される。絶対変な目でユウを見ていたのがバレてると二人の背中には嫌な汗が流れた。
「先輩も魔法薬学の授業ですか?」
「あれー聞いてないっすか?
今日は一二年合同授業っスよ。
ユウくんはもう誰と組むか決めてるんスか?」
ユウは魔法が使えないので、魔力を込める作業が出来ない。なので…実験に関わる授業のほとんどは、細かい材料の準備や後片付けなどサポートに回っていた。