第7章 Magical flower(魔法の花)
クルーウェル先生からもらったご褒美の飴ちゃんを、グリムとわちゃわちゃと食べるユウ。
「そう言えば…
呼び出しされた要件って何だったんですか?」
「ん、ああ、そうだったな」とユウの毛並みに整えるのに夢中なクルーウェルが、思い出したかのように(実際忘れてた)どこからか両手に一つのガラス瓶を抱えて持ってきた。
「…わぁ、綺麗…」
丸いガラス瓶の中身は、煌めく花が一輪咲いてた。
枯れないようになのか、液体が満たされており、スノードームのようにキラキラと花の粒子が光に反射して美しかった。
「この花は今ハーバリウム…つまり特別なオイルに漬けてガラス瓶に保存する植物標本となっている。
科学的に保存された押し花などと同じ技法だ」
「科学…?魔法ではないんですか?」
「…ん。その花は魔法の花だからな。
魔法薬だと何かと相性が悪いんだ」
「魔法の花っ!!」
わっ!っとその花をまじまじと見つめた。
この世界に来て、魔法やファンタジーな現状に触れると胸がワクワクしてしまう。
(これが魔法の花!)と感動して見るも、素人目には普通の花との違いが分からなかった。
興味を持ったユウを気を良くしたのか、クルーウェルが説明を続ける。
「その花は古くから存在し、様々な名前をつけられてきた。
『マジック・ミラー(魔法の鏡)』『リメンバー・ミー(私を思い出して)』。原種はイエローウィンか、カサブランカではないかと言われている。
なぜ、色んな名で呼ばれた来たのか…。
それはある伝説の由来が大きい。
子犬は、髪長姫の物語は知っているか?」
「…髪長姫…?知らないです」
クルーウェルは気にせず続けた。
まるで授業を受けているようだ。
「その話を要約すると、こうだ。
あるプリンセスが、甦りの呪文をその花に歌うと
時間を過去に遡りどんな傷も癒し
人々に永遠の若さを与えた…という話だ。
マ、実際は眉唾ものだったがな……。
だが、その伝説に人々が殺到し、狩りつくされ
今では指定希少魔法植物種に指定されている。
今お前の目の前にあるのは、そんな花だ」
改めて花を見るとゴクリっ…と固唾を呑む。
そんな希少な物に気安く擦れようとしていた手を
引っ込めた。