第6章 Rose prince (薔薇の王子様)
とりあえず沈黙は良くないっ…。
女は度胸!と胸の中でファイティングポーズを取った。
「リ、リドル先輩がこんな所にいるなんて…
め、珍しいですね!」
案の定、声が裏返った。
「?……面白いことをお言いだね。
ハーツラビュル寮所属は、ボクの方だけど…」
「あ、いえ、…なんていうか。
リドル先輩は他の寮長の中でも、
寮生の悩みに丁寧に耳を傾けたり、
寮長の仕事も忙しいのに学年主席の座は
常にキープしてて…いつも凄いなぁって…!
それで…いつも忙しそうにしている
イメージがありまして。
でも、さっきの…
ハリネズミたちを見る目が
とっても優しかったので、びっくりしました。
動物がお好きなんですか?」
嗚呼、うまくしゃべれないっ!
自分何言ってんだろう…と落ち込む。
それもこれも、オーバーブロット事件以降
急に王子様キャラに
変わったリドル先輩が悪いんだ!
私一人だけの力で解決したわけじゃないって何回も言ってるんだけど、「……キミに救われたんだ」って言って聞かないし、あの事件以降良くも悪くも、レディとして紳士的に対応され恥ずかしい。
助けて!グリム…と自己嫌悪しているユウは、気づかなかったが、ユウに褒められて嬉しかったのか、リドルは赤くなる頬を手で押さえていた。
「ゴホンっ……。動物…そうだね。
ハリネズミの世話は趣味の一環かな。
今、この子が身ごもっていてね……。
心配でつい、時間が空くと見に来てしまうんだ」
そう言ってリドル先輩の視線を辿っていくと、
ピンク色と青色のハリネズミの夫婦が
身を寄せる様に眠っていた。
「うわぁ……可愛い。
この子達、とっても幸せそうですね」
「ああ。ハリネズミの夫婦もフラミンゴの夫婦も
どちらも……すごく仲がいいんだ。
…羨ましいよ」
羨ましい………???
「夫婦仲が良いことって素敵ですもんね」
予想の斜めからの台詞に、驚いたが
とりあえず当たり障りのない返しをしておく。
あまり負の感情について追求すると
何が引き金となって彼の暗い過去に触れるか分からないからだ。