第6章 Rose prince (薔薇の王子様)
「全く。騒がしいから誰かと思ってみれば
…また君たちか。
寮の行事に熱心なことは良いことだけれど、
ボクたち学生の本分は学業であるべきだよ。
ところで、明日の授業の予習はすませたのかな?
また、赤点を取るようであれば
…お分かりだね?二人とも」
「「はい!寮長っ!」」
ピシャッと雷に打たれたかの如く、
体をしならせるエースとデュース。
「悪ぃ!ユウ、オレの代わりに餌あげといて!頼んだ!」「えっ…ちょ!こらエース!」とユウの叫びもむなしく、彼らは脱兎のように逃げていった。
その間5分未満。
「逃げ足速ぇーんだゾ」とグリムもあきれた。
取り残されたユウは、リドルが怒っていないか心配だったが、意を決して目を向けると…
その顔は、ふふっ…と楽しい声が漏れ
まるで悪戯に成功した子供みたいな笑顔があった。
以前の彼のように、怒りに任せて
顔を真っ赤にしていた表情とは対照的で…
思わず呆気に取られてしまって
ぽかんっ…と情けなく口が開いた。
「まるで迷子の女の子のような顔だね。
心配しなくていい。
こっちへおいで。僕のアリス」
ドキッと心臓が飛び跳ねた。
手の伸ばして微笑むリドル先輩は、まるで
貴公子……いや、王子様……?
まるでRSAの生徒のような対応に、やけに心臓がうるさいユウは、脳が正常に機能せず言われるがまま従った。
最近の彼は、なぜだか…こういった態度が多い。
ヴィランの集まりであるNECの中でも
女性に対して紳士的だとは知っていたが。
なんとも言えない甘ったるい雰囲気に、ユウはどうしたらいいか分からなかった。